ここからしか見えない京都
  

十三回目「梅雨はあじさい寺へ」

こちらで連載をスタートさせていただいて1周年を迎えました。
いつも読んでくださる皆さま、本当にありがとうございます。

パァーッとお祝いしたい気分なのですが、季節は梅雨。
ジメジメとした天気が続いていては、気分もいまひとつ晴れませんね。
梅雨が苦手という方も多いと思いますが、梅雨のない北海道で育った私にとっては、そもそも梅雨に慣れていません。息苦しいような蒸し暑さと雨続きには、うんざりとしてしまいますが、梅雨に馴染みがなかった分、物珍しさもあります。

あらためて梅雨について考えてみると、もしかしたら人の営みのリズムにマッチしているのかもしれないと思いました。
卒業、入学のシーズンである何かと忙しい3月、4月が過ぎると、息つく間もなく5月の大型連休を迎えます。
そうして、やれやれと落ち着いた頃から、梅雨が始まるわけです。
これはもしかすると、「春からずっとバタバタしていたね。ちょっとゆっくり過ごすのも良いよ」という天の思し召し。無理に出かけようとせず、読書をしたり、映画鑑賞をしたり、自宅でのんびりすることを推奨する時季なのかもしれない……。

そう思ったのですが、この時季に見頃を迎える紫陽花を愛でるために『あじさい号』という電車が走っている鎌倉然り、京都でもこの季節にこそ素敵な景色が見られる神社仏閣があります。
いやはや、どんな時でも美しいものを愛で、楽しもうとする古都の心が本当に素晴らしいと思います。
そう、梅雨だからと出かけるのを諦めるのではなく、季節に応じて楽しむのが古都のたしなみなのです。たぶん。
前置きが長くなりましたが、今回は梅雨の季節にこそ行きたい京都の名所。
「あじさい寺」と呼ばれる二つのお寺をご紹介したいと思います。

まず、一つ目の「あじさい寺」は、宇治の『三室戸寺』です。

三室戸寺 画像素材:PIXTA

「あじさい園」と呼ばれる広大な敷地には、色とりどりの紫陽花が、咲き誇っています。
階段を上り、高いところから眺める「あじさい園」は、まるで花の渓谷のようで、圧巻。素晴らしい見応えです。
そして、ここには見付けたら恋愛成就になるかも?と囁かれている『ハートの紫陽花』があるとか。残念ながら私は見付けられなかったのですが、三室戸寺に行った際には、ぜひ、探してみてください。

花に癒された後は、和スイーツはいかがでしょうか。
伊藤久右衛門宇治本店の茶房でのみ味わえる抹茶パフェがオススメです。

伊藤久右衛門宇治本店

京都には、他にも「あじさい寺」と呼ばれているお寺があります。
それは京都の南西に位置する『善峯寺』。

善峯寺 画像素材:PIXTA

『三室戸寺』と並び、京都最大級の「あじさい苑」を持ちます。
こちらの素晴らしいところは、標高300メートルの高台にあるため、京の町を一望できるのです。西から眺める京の町は、清水寺や銀閣寺といった東側から見る景色とはまた一味違って良いものです。いつ行っても素晴らしい景色が用意されている『善峯寺』ですが、この季節は、紫陽花の満開の季節に訪れると、紫陽花越しに京都を一望できるのですから、魅力は倍増ですね。
まさにこの季節だからこその楽しみです。

そして『善峯寺』から少し行くと、私の大好きなお煎餅が美味しい和菓子屋さん『小倉山荘』の本店があります。

おすすめは『嵯峨野焼』というお煎餅なのですが、本店にはカフェもあり、お米や季節の食材にこだわった料理や、和スイーツが取り揃えていますので、良かったら。

おや、結局、最後は食べ物。
花より団子になってしまいましたが、それもお出かけの楽しみですよね。

こうして紹介させていただきましたが、やはり、雨の日はお出かけが億劫になるもの。
出かけたくないけど、退屈という時は、良かったら拙著をお手に取っていただけると嬉しいです。
気楽に読めて、京都を旅する気分を味わえるものを多く取り揃えております。なんて。

こんな一周年の記事ですが、皆様、今後ともどうぞよろしくお願いいたします。

そして、担当のO山さん。いつもありがとうございます。
心から感謝申し上げます。

この記事を書いた人
望月麻衣
 
京都在住の道産子。もの書き。 『京都寺町三条のホームズ』(双葉社)『わが家は祇園(まち)の拝み屋さん』(KADOKAWA)『京洛の森のアリス』(文藝春秋)『太秦荘ダイアリー』(双葉社)など書籍発売中。  
 

タグ一覧

#人気ワード