ここからしか見えない京都
  
展望室からは京都の市街地を360度見渡すことができる。京都タワーを初めて訪れた常盤さんも眺望のすばらしさに感動 ©KBS京都/TOKYO MX/BS11

近代京都に思いを馳せる歴史建造物めぐり

レトロな建物が集まる三条通

名建築が数多く保存され、歴史的価値の高い建築を現代的に活用している京都。まさに街全体が“生きた建築博物館”です。レトロ建築を愛してやまない常盤貴子さんが最初に訪れたのは、1964年(昭和39年)、当時の国鉄京都駅北側に誕生した地上131メートルの京都タワー。一切鉄骨を使用せず、“モノコック構造”という円筒形の鋼板をつなぎ合わせる日本初の工法によって、なめらかなフォルムが実現したそうです。

京都の街を照らす灯台をイメージした京都タワー。設計者は、日本武道館をはじめ、個性的なデザインの作品を数多く生み出した近代モダニズム建築の旗手、山田守 ©KBS京都/TOKYO MX/BS11

かつて金融や商業の中心地だった三条通は、レトロ建築が集まるエリアとしていま注目を集めています。なかでもひときわ目をひく赤レンガ造りの建物が「京都文化博物館別館」。もとは1906年(明治39年)に竣工した日本銀行京都支店で、明治を代表する建築家・辰野(たつの)金吾(きんご)と、その弟子の長野(ながの)宇平治(うへいじ)の設計によるもの。旧営業室のホールや金庫室のカフェで、銀行らしい重厚感を味わうことができます。

東京駅丸の内駅舎を設計した辰野金吾の設計による京都文化博物館別館。赤いレンガの建物は無機質なビル群に映えるランドマーク的存在 ©KBS京都/TOKYO MX/BS11
もとは営業室だったという別館ホール。重厚感漂う、天井高のゆったりとした空間は、展覧会や催事などで使用されることも多い ©KBS京都/TOKYO MX/BS11

常盤さんも以前から気になっていたと話す「1928ビル」は、旧大阪毎日新聞社京都支局として1928年(昭和3年)に竣工。京都帝国大学工学部建築学科の創設者、武田五一(ごいち)が設計しました。五一は、アール・ヌーヴォーなど西洋の前衛的な造形を日本に紹介したほか、数々の建築の設計を手掛け、“関西近代建築の父”と称されています。一時はその存続が危ぶまれましたが、現在はカルチャー発信基地として三条通に人の流れを呼び込んでいます。

大正ロマンの空間で美味を堪能

清水寺へと向かう清水坂の近くに、和洋折衷のモダンな「五龍閣」がたたずんでいます。明治時代、京都の磁器製造を国際的に発展させた実業家、松風(しょうふう)嘉定(かじょう)の旧邸宅で、設計は1928ビルを手掛けた武田五一。1階の「清水順正おかべ家 夢二カフェ五龍閣」(不定期営業)には竹久夢二の作品が飾られ、大正ロマンを感じることができます。

一見洋館のようだが、屋根は瓦葺きになった和洋折衷様式の五龍閣。先代の祖父が夢二と親交があったことから、交わされた書簡や楽譜の一部なども展示している ©KBS京都/TOKYO MX/BS11

四条大橋東詰に立つ「レストラン菊水」は、1916年(大正5年)創業。京都の西洋料理の草分け的存在で、1階は喫茶や軽食が楽しめるレストランとパーラー。2階は本格フレンチが堪能できます、夏に営業する屋上ビアガーデンは、鴨川を眼下に望むロケーションが人気です。南座が正面にあることから歌舞伎関係者の利用も多いとか。

放物線を描くフォルムが印象的なレストラン菊水。屋上には京都初といわれるビアガーデン(夏季のみ営業)もある ©KBS京都/TOKYO MX/BS11

「レストラン菊水」が四条大橋の東側のランドマークとすれば、西側のランドマーク的存在が「東華菜館」。1926年(大正15年)に洋食レストランとして竣工、日本に新しい作風をもたらしたアメリカ人建築家のウィリアム・メレル・ヴォーリズが設計を施しました。 その後、戦争の影響から建物はオーナーの友人の中国人に託され、現在に至っています。直線と曲線を組み合わせた天井や梁、扉の装飾、調度品などが当時のまま保存され、日本最古のアメリカ・オーチス社製のエレベーターがいまも元気に活躍しています。レトロな雰囲気の中で、本格的な北京料理を味わってみてはいかがでしょう。

東華菜館のエレベーター前で。蛇腹式の内扉や時計針式のフロアインジケーターなど、まるでアメリカの古い映画の世界に迷い込んだようだ ©KBS京都/TOKYO MX/BS11

【次回放送情報】
■京都画報 第13回「近代建築の都をめぐる」
BS11にて10月12日(水)よる8時00分~8時54分放送

※ 放送後、BS11+にて10月12日(水) よる9時~ 2週間限定で見逃し配信いたします。

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