京都はいけばな発祥の地。暮らしの中に根付いた花が、今さまざまな形で表現されています。そこで今回は、文字通り「百花繚乱」な京都の花の世界を常盤貴子さんが巡ります。
2024年に開園100周年を迎えた京都府立植物園は、24万平方メートルの広大な敷地に、約1万2000種類、約12万本の植物が栽培されている府民の憩いのオアシス。川端康成の小説『古都』の一節にも登場する、長さ200メートルのクスノキの並木道は植物園のシンボルです。そして、必見は洋風庭園の一角にあるバラ園。世界バラ会議で認定されている20種のうち11種を栽培。また京都の地名にちなんだ品種など、約320品種1400株のバラが春から秋にかけて見頃を迎えます。比叡山とバラ園を一望できる、バラテラスからの眺望もお見逃しなく。
常盤さんが次に訪ねたのは、いけばなに新たな風を吹き込んできた華道の家元、未生流(みしょうりゅう)笹岡。出迎えてくれたのは三代家元・笹岡隆甫さんです。未生流は1919年、初代・竹甫が未生流を踏襲した笹岡式盛花(もりばな)を生み出し、創流したのが始まり。庭の花を摘んで生ける、日本人ならではの“花文化”を常盤さんも体験しました。
次に笹岡さんと訪れたのは、河原町三条で花を販売する「花政」。5代目主人・藤田修作さんは京都の花業界の有名人で、花を販売するだけでなく、旧家の座敷や料亭の床の間、美術館のエントランスなどの花の生け込みや、フラワーアレンジメントを手掛けています。常盤さんは生花店での注文の仕方や花を長持ちさせるコツ、生け方などを伝授してもらいました。藤田さんのプロフェッショナルな仕事ぶりは、花に対する想いと高い美意識によって成り立っていたようです。
叡山電車の元田中駅近くにある「La Part Dieu(ラ・パール・デュー)」は、笹岡さん行きつけのフレンチレストラン。オーナーシェフの白波瀬和宜(しらはせ・かずたか)さんは神戸の北野ホテルグループや京都のフレンチの名店「ベルクール」で腕を磨き、その後「ベルクール」をリニューアルしてこの店をオープンしました。看板メニューの「花冠~自然からのめぐみ~」は、旬の魚介を使った料理の上に、大原の野草と無農薬で育てた朝摘みの花のサラダを盛り付けた一皿。まるで花畑が現れたように美しく、テーブルに運ばれると客席から歓声があがるほど。盛り付けをそのままにしておきたいところですが、下に隠れた食材と混ぜ合わせることで、野草や花の香りや苦みが口の中で絶妙に絡み合うのだとか。また香味野菜のように花をメーン料理に添えたり、ソースに仕立てたりと、白波瀬さんの料理には花がいろいろな形で活用されています。
次に出合ったのは、京都大学の土佐尚子特定教授が手掛ける「サウンドオブいけばな」。生きた花ではなく、スピーカーからの音の振動で、絵の具が動いた様子をハイスピードカメラで撮影したアート作品です。飛び上がった液体の左右非対称のフォルムが、いけばなの美しさに通じるものがあるとして、国内外で高く評価されています。現在、土佐さんは新たに「無重力アート」に取り組んでいます。無重力の中で音の振動が液体にどう作用するのかという研究の一環にもなり、JAXAもNASAもやっていないという世界初の試み。最先端のテクノロジーの中にも、日本の伝統と文化がしっかりと息づいていました。
【次回放送情報】
■京都画報 第45回「花でつづる京都の生活 ―花の都は百花繚乱!―」
BS11にて6月25日(水)よる8時00分~8時53分放送
出演:常盤貴子
※ 放送後、BS11+にて6月25日(水)よる9時~ 2週間限定で見逃し配信いたします。