京都の特等席でエッセイを書かせていただき始めてから、3度目の夏を迎えました。
これまで、貴船神社での七夕、八阪神社の祇園祭、下鴨神社のみたらし祭り、さらに五山の送り火などを紹介させていただき、もう私が語れる京都の夏の風物詩はなくなってしまった……かも?
などと思っていたのですが、まだしっかりありました。
さすが、京都。層が厚い(?)です。
京都の夏の風物詩、ラストを飾るのは何かと言いますと、『地蔵盆』です!
私が京都に移り住んで驚いたことのひとつに、お地蔵様がそこかしこにいらっしゃることでした。
子どもたちが遊ぶ公園にも当たり前のようにあって、
「公園にもお地蔵様がいる!」
と驚いていたら、夫と義母が
「そんなん当たり前やろ」
「そうや。子どもたちを見守ってるんやし」
などと周りの方が言うわけです。
「いや、でも、サッカーボールとか当たったらって考えてしまって」
子どもが力いっぱい蹴ったボールが、お地蔵様にがこんと当たる様子を想像して心配する私に、義母が不思議そうに訊ねました。
「ほんなら、北海道の公園にお地蔵様はないんやろか?」
「基本的には……お地蔵様自体、そんなに目にするものでもなかったので」
「ほんなら、『地蔵盆』はどないするん?」
「『地蔵盆』ってなんですか?」
「…………」
と、文化が違いすぎて、会話が一時遮断となる事態になったほどでしたが笑
おそらく、これは私だけの話ではなくて『地蔵盆』に馴染みのない方は全国にたくさんいらっしゃるのではないかと思います。
そんなわけで、今日は『地蔵盆』についてご紹介させていただきます。
私が京都市左京区に移り住んで間もなく、地区の役員を引き受けました。
なんでも、私が住んだ家が順番的に役員を引き受けることになっていたそうで、
「引っ越してきたばかりで、とても言いにくいんですが、順番なので伝えさせてください。役員を引き受けていただきたく……」
と、役員引き継ぎの方々がお葬式のような表情でやってきたのです。
「あ、はい、いいですよ。やります」
私が二つ返事で引き受けると、
「ええええ?いいんですか???」
と驚かれたことが印象的でした。
やはり皆さん、役員をやりたがらずに渋られるらしいのですが、私はずっと転勤族だったため、その土地を知り、なおかつ知り合いを作るには役員をやるのが手っ取り早いと思っていたので、この申し出は渡りに船だったんです。
そんなわけで地区別対抗運動会の準備や『地蔵盆』の準備をさせてもらったのは、もの書きとしてもとても良い経験になりました。
『地蔵盆』は、京都(近畿地方)を中心に行われているもので、町内の地蔵さんにお供物をしてお祀りをする、子どもたちが主役の地域の行事です。
行われるのは、地蔵菩薩の縁日である8月23日・24日の2日間ですが、今はどちらか1日だけだったり、その前後の土日で行われるところもあるそうです。
どんなことをするかというと、
①地区のお地蔵様(辻地蔵)を綺麗にし、赤い前掛けをつける。
②提灯を飾る(赤や白)。
③お菓子などをお供えする。
ここまで基本的な感じでして、私が関わった地区は大きな寸胴鍋にカレーを作ったり、投げ縄やヨーヨー釣り、花火などを揃えたりと、子どもたちのためにあれこれ用意をします。
さらに地区によってはお坊様がきてお経を唱えまして、いよいよ『数珠回し』が始まります。
そう、この『数珠回し』こそ、『地蔵盆』で行われる特徴的な伝統行事ではないでしょうか。
『数珠回し』は子どもたちが輪になって座り、直径5メートルはあるだろう大きな数珠を読経にあわせてぐるぐるとまわすというもので、大きな房が自分のところにくると、一礼をするそうで、この大きな数珠を体に当てると、邪気を払い除け、身を清めてくれると言い伝えられているそうです。
そんな『地蔵盆』、子どもたちは毎年大喜びでした。
私も汗だくになって役員の皆さんとカレーを作り、その後、子どもたちの笑顔を眺めながら飲む冷えたビールが最高に美味しかったです。
きっと、お地蔵様もこんな温かい目で子どもたちを見守っているのだろうな、などと缶ビール片手に(俗世にまみれながら)思った私でした。
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そんなわけで、今回は『地蔵盆』のご紹介でした。
これを書いていて『地蔵盆』に顔を出したくなりましたが、残念ながらその頃、私は文学フリマ札幌に出店するため、北海道に飛んでいます。
その際、札幌でもトークイベントをするので、京都の夏の行事のお話などできたらと思っている次第です。
皆さま、まだまだ暑い日が続くので、水分と塩分補給を怠らず、体調管理に気をつけて、ご自愛くださいね。