毎年7月1日から31日の1カ月にわたり、神事や行事が執り行われる祇園祭。今年も、京都市内中心部は山鉾巡行の熱気に包まれました。今回は常盤貴子さんが華やかな舞台の裏で、山鉾巡行を支える人々の熱い思いを追いかけます。
最初に訪れたのは、八坂神社の常盤殿。綾傘鉾(あやがさほこ)の稚児に選ばれた6人の子どもたちが、神事のために美しく装います。稚児に白化粧を施すのは化粧方(けしょうかた)の仕事です。化粧くずれを防ぐため、下地にはびんつけ油を塗り、顔全体に水おしろいを刷毛で塗っていきます。そして、粉おしろいでおさえて仕上げ。おしろいの配合は門外不出で、口伝(くでん)によって受け継がれています。
山鉾巡行は前祭(さきまつり)が17日、後祭(あとまつり)が24日に行われます。後祭に登場する鷹山は、応仁の乱以前から存在する由緒ある曳山でしたが、 度重なる災害により懸装品や曳山本体を失い、休み山となっていました。その鷹山が2022年に再建され、196年ぶりに復帰。山を飾る金工品を手がけているのは、日本を代表する京都のジュエリーブランド「俄 NIWAKA(にわか)」です。常盤さんが見せてもらった試作品の房掛けの飾り金具の鷹は、4年掛けて製作されたもの。「NIWAKA」のプロジェクトチームは金工品の復元新調にあたり、文化文政期の絵師たちが描いた鷹の作品を調査し、時代的な特徴を分析。当時にない材料や道具は使用せずに、製作を行っているのだとか。2027年には鷹と松の2体ずつが完成。2029年には残りの鷹と松2体と蝙蝠(こうもり)、桃、見送り房掛け金具が完成する予定となっています。
祇園祭の風情を食で楽しめるのが、四条烏丸にほど近い「和ごころ 泉」。店主の泉昌樹(まさき)さんは日本料理の名店「桜田」で腕を磨き、「桜田」閉店後に師匠の思いを受け継いで、同じ場所に店をオープンしました。ミシュランの星を獲得した料理はもちろん、季節ごとに趣向を凝らした器も目を楽しませてくれます。常盤さんに供された椀物の蓋には、山鉾の絵が。蓋を開ければ、夏の京都に欠かせないハモ料理が現れます。続いて登場したのは、祇園祭の長刀鉾をかたどったオリジナルの器。中には夏らしく彩られたハモをはじめとするお造りが並びます。料理を引き立てる日本酒のラインアップにもこだわり、この店でしか味わえないオリジナルの酒は見逃せません。
鶏鉾(にわとりほこ)は 2024年の前祭で木製車輪の一部が破損し、巡行を途中で断念しました。その車輪の修理を担当したのが南区の竹田工務店です。山鉾の車輪は直径およそ2メートル、10トンを超える山鉾の車体を支えています。ボルトや釘、接着剤などを使わずに組むため、木製車輪の製作・修繕には高度な技術と緻密な作業が必要となります。7月12日、修繕された車輪2輪が鶏鉾にはめられ、試し曳きをすると力強く動き始めました。竹田工務店は、祇園祭で山や鉾を組み立てる作事方(さくじかた)や、鉾巡行当日に鉾の進路の調整や停止、辻回しを行う車方(くるまかた)を担っています。
華やかな祭りの裏で、伝統を継承し続けるために縁の下で活躍する多くの人々。それを想像するだけで、祇園祭の楽しみ方がもっと豊かになりそうです。
【次回放送情報】
■京都画報 第47回「祇園祭を支える人びと」
BS11にて8月13日(水)よる8時00分~8時53分放送
出演:常盤貴子
※ 放送後、BS11+にて8月13日(水)よる9時~ 2週間限定で見逃し配信いたします。