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滋賀県大津市から京都市内を流れる琵琶湖疏水は、明治期に東京遷都によって活力をなくした京都府が、産業振興のために築きあげた人工運河だ。当時の技術と英知を結集し、設計から施工までを日本人の手によって完成させた。その琵琶湖疏水の施設が今年8月27日、5カ所が国宝、24カ所が重要文化財に正式に指定された。
国宝に指定されたのは疏水の第一隧道、第二隧道、第三隧道、インクライン、南禅寺水路閣。隧道は疏水のトンネルで、春と秋に期間限定で運航する「びわ湖疏水船」に乗船しながら眺望できる。トンネルの各出入り口上部には、太政大臣を務めた三条実美(さねとみ)、初代海軍大臣・西郷従道(じゅうどう)、初代内務大臣・山縣有朋(ありとも)などの揮毫(きごう)が彫られているので、船の上から注目したい。今年の秋季は例年よりも運航期間を延長し、12月1日から7日は「国宝・重要文化財記念便」を運航し、乗船者に記念品が進呈される予定だ。
フォトスポットとしても知られる南禅寺水路閣は、南禅寺境内を通る水路橋だ。周囲の景観に配慮して設計された橋脚は、レンガや花崗岩(かこうがん)を使ったアーチ型のモダンなデザイン。長年の風雨にさらされた橋は全体的に味わい深くなり、古刹の南禅寺としっくりと調和する。水路閣の脇にある石段を上れば、橋の上をいまも水が絶え間なく流れているのがわかる。
水路閣と並び、フォトジェニックな場所として知られるのが蹴上インクライン。蹴上エリアは高低差が約36メートルあり、当時、舟で物資を運ぶことが困難だったために、蹴上船溜(ふなだまり)と南禅寺船溜の間を台車に舟を乗せて走らせるインクライン(傾斜鉄道)を建設した。だが昭和になると舟運は鉄道輸送に代わり、1948年にインクラインも役目を終えた。現在もレールはそのまま保持され、観光スポットとしてレール上を自由に歩くことができる。
疏水建設にまつわる人々の情熱や歴史を知ることができるのが、左京区にある「琵琶湖疏水記念館」だ。第3代京都府知事・北垣国道(くにみち)は、当時の京都府の年間予算の2倍となる、莫大な工事費を費やした疏水プロジェクトを計画。まだ大学を卒業したばかりの技師・田邉朔郎(たなべ・さくろう)や、疏水技術に長けた南一郎平(みなみ・いちろべえ)を登用し、延べ400万人の手によって様々な困難を乗り越えながら進んでいく工事の様子などがうかがえる。
また南禅寺界隈の別荘群は、疏水の水を引き込んで作られた庭園が多い。南禅寺境内にある「大寧軒(だいねいけん)」は、通常非公開だがイベントや期間によって公開されることも。また長らく非公開だったが、2024年秋から一般公開された「對龍山荘(たいりゅうさんそう)」も近代日本庭園の醍醐味が味わえる。
製作著作:KBS京都 / BS11
【放送時間】
京都浪漫 悠久の物語
「琵琶湖疏水が国宝へ~京都を支えた豊かな水の恵み~」
2025年9月22日(月) よる8時~8時53分
BS11(イレブン)にて放送