観光客でにぎわうJR嵯峨嵐山駅の隣、トロッコ嵯峨駅から出発するのが嵯峨野トロッコ列車だ。嵯峨野観光鉄道が運行する観光列車で、トロッコ亀岡駅までの片道約7キロを25分かけて、保津川峡谷沿いの景勝地をのんびりと走る。複線化で使われなくなったJR山陰本線の旧線を、観光列車用の路線に変更して1991年に開業。以来、国内外の観光客に人気を集めている。春の桜、秋の紅葉など四季折々に楽しめるが、みずみずしい新緑の今、峡谷はいっそう美しく輝き、絵画のような景色が広がる。
終点となる亀岡は、古くから京都と丹波地方を結ぶ要衝で、奈良時代には国府が置かれ、政治・経済の中心地として栄えた。そのため丹波国分寺跡など国の史跡が残る。健脚ならゆっくりと北上し、ハイキングがてら史跡巡りを堪能したい。
保津川下りを見やりながら千歳山の裾を約5キロ北上すれば、「商売繁盛の毘沙門さん」として親しまれる神応寺(じんのうじ)に出合う。「丹波七福神めぐり」の第1番札所で、境内の「瑞雲三十三観音」や、般若心経の1文字が彫られた272体の地蔵が並ぶ石仏庭園は、園内に立つだけで不思議と心安らぐ。
さらに山裾を3キロほど北上すると、縁結びで有名な出雲大神宮にたどり着く。島根の出雲大社へ大国主命(おおくにぬしのみこと)の御霊(みたま)を遷(うつ)した「元出雲」として知られ、境内の夫婦岩には良縁を祈願する赤い糸が無数に結ばれている。
出雲大神宮に隣接する極楽寺は、「丹波七福神めぐり」の第6番札所。山門脇の寿老人の石像がにこやかに迎えてくれる。出雲大神宮とゆかりが深く、大神宮境内にあった神宮寺の十一面観音立像(りゅうぞう)を収蔵する。
さらに800メートルほど北にあるのが、旧皇族・伏見宮家(ふしみのみやけ)ゆかりの東光寺だ。こちらは「丹波七福神めぐり」の第7番札所。境内には幸福、俸禄(ほうろく)、長寿の三徳を授けるという福禄寿の石像と、なでて願掛けをする「身代わり福禄寿」を祀る。また延暦寺の僧、智証大師(ちしょうだいし)作と伝わる秘仏の薬師如来立像を安置する。
トロッコ列車を満喫しながら、京都の奥座敷・亀岡で、さわやかな新緑の旅を楽しみたい。
製作著作:KBS京都 / BS11
【放送時間】
京都浪漫 悠久の物語
「トロッコ列車で行くもう一つの京都」
2025年5月19日(月) よる8時~8時53分
BS11(イレブン)にて放送