ここからしか見えない京都
  
のどかな風景が広がる大原。大原バスターミナルを中心に4つの散策コースが設けられている

自然と歴史の山里、大原へ

京都府と滋賀県の県境に位置する自然豊かな山里、大原。かつて柴や炭などを頭に載せ、京の街に出向いていた女性の行商「大原女(おはらめ)」がいたことで知られ、4月下旬には往時をしのぶ「大原女時代行列」を開催している。そのルートになっているのが「大原女の小径(こみち)」だ。寂光院(じゃっこういん)から三千院を結ぶルートには、小さな「大原女石像」がたたずみ、散策にぴったり。

大原は比叡山から下りてきた僧侶が修行道場を開いたことから、仏門に入った皇族や貴族の隠棲(いんせい)の地となった。聖徳太子が父・用明天皇の菩提を弔うために建立したと伝えられる寂光院は、天台宗の尼寺。平家が源平合戦に敗れた後、平清盛の次女、建礼門院が我が子・安徳天皇の菩提を弔いながら終生を過ごした。歴史ある寺院だが、残念なことに2000年の火災で堂宇が焼失、現在の本堂は2005年に再建されたものだ。また本尊もその火災で損傷したが、美術院国宝修理所によって鎌倉時代の造立当時と同じ姿に修復され、収蔵庫に収められている。現在、本堂には模刻された地蔵菩薩像が安置されている。『平家物語』に登場する「汀(みぎわ)の池」や、四方のどこから見ても正面に見える「四方正面の池」などがある、静かな庭園をゆっくりと散策するのもいい。ちなみに大原は赤紫蘇の栽培が盛んで、寂光院はしば漬け発祥の地といわれる。

新緑の頃は青モミジが美しい寂光院。境内には建礼門院が暮らした庵跡や井戸が残る

1965年に発売されたヒット曲「女ひとり」の歌詞で、一躍有名になったのが三千院だ。平安時代以降は皇族が住職を務めた門跡寺院。伝教大師作と伝わる本尊の薬師瑠璃光如来は秘仏。客殿の「聚碧園(しゅうへきえん)」や、宸殿前の「有清園(ゆうせいえん)」など、四季折々に表情を変える美しい庭園も見どころだ。有清園にたたずむ「往生極楽院」は三千院の中でもっとも古い堂宇で、平安時代中期の天台宗の僧、恵心僧都源信(えしんぞうずげんしん)が両親の菩提を弔うために建立したと伝わる。堂内には国宝の阿弥陀三尊像を安置、建物は重要文化財に指定されている。境内の宝物館「円融蔵(えんにゅうぞう)」には、極楽浄土の様子を表した建立当時の堂内の状態を復元展示している。

三千院の玄関口、御殿門。高い石垣に囲まれ、城のようなたたずまいを見せる
往生極楽院に安置される阿弥陀三尊像。両脇侍は「大和坐り」といわれる珍しい姿

大原女の小径沿いにある「大原リバーサイドカフェ来隣(きりん)」は、ひと休みに格好。大原産の米や新鮮野菜にこだわった「おにぎりランチ」は、5種類の小さなおむすびとおばんざい、サラダバイキングが付く人気のメニューだ。

来隣の店主は野菜ソムリエの資格を持ち、こだわりの新鮮食材をふんだんに味わえる

木々の緑が美しいこの季節、大原の自然の中で歴史散歩を楽しみたい。

製作著作:KBS京都 / BS11

【放送時間】
京都浪漫 悠久の物語
「大原女の小径を歩く癒やしの旅~寂光院から三千院へ~」
2025年6月16日(月) よる8時~8時53分
BS11(イレブン)にて放送

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