ここからしか見えない京都
  

花、庭、寺宝を鑑賞する春の特別拝観

桜が咲く頃に始まるのが、寺院の特別拝観だ。今回はまだ間に合う、通常非公開の塔頭(たっちゅう)の特別拝観を紹介する。

嵯峨嵐山の天龍寺塔頭、弘源寺では毘沙門堂の厨子(ずし)に安置されている非公開の毘沙門天立像(重文)が開帳される。インドの仏師によって作られ、中国を経て、比叡山の無動寺から弘源寺に迎えられたという。毘沙門天が左手に持つ宝塔は、精進の心を促して智慧(ちえ)、福徳を与え、右手の戟(げき=古来の中国の武器)は、人間の心に起こる邪気を払い、災厄を消し去るそうだ。毘沙門堂の天井にも注目だ。日本画家の初代藤原孚石(うせき)による48面の四季草花が描かれ、心を和ませてくれる。

勇ましい姿が印象的な弘源寺の毘沙門天立像

さらに、弘源寺とゆかりの深い日本画家の竹内栖鳳とその一門による襖絵や、幕末に長州藩士がつけた本堂の刀傷も見どころ。特別拝観は5月18日まで。

弘源寺では所蔵する竹内栖鳳の貴重な作品を公開

弘源寺同様、天龍寺塔頭の宝厳院も6月30日まで特別拝観を行っている。見どころは、嵐山を借景にした山水回遊庭園「獅子吼(ししく)の庭」だ。室町時代の禅僧、策彦周良(さくげんしゅうりょう)禅師が作庭したもので、江戸時代に発行された「都林泉名勝図会」にも記載された名勝。見て、感じて、じっくりと鑑賞したい。本堂の襖(ふすま)にはドキリとするほど、真っ赤な絵が広がる。「風河燦燦三三自在」の名を持つこの作品は、画家・田村能里子(のりこ)が描いたもので、ダイナミックな色使いは我を忘れて見入ってしまうほど。

田村画伯による58枚の襖絵が印象的な宝厳院の本堂

北区の大徳寺塔頭、興臨院は能登の守護・畠山義総が室町時代後期に創建。後に前田利家により屋根の葺き替えが行われ、以後、畠山家に加え前田家の菩提寺となった。

本堂(方丈)は入母屋造りの檜皮葺(ひわだぶ)きで、禅宗らしい優美な姿を残す。唐門、表門とともに重要文化財。本堂の枯山水の庭は、“昭和の小堀遠州”と称される作庭家・中根金作によって復元されたもの。例年5月下旬からサツキやツツジが咲き誇る。また特別公開では、茶人で武将であった古田織部好みといわれる茶室「涵虚亭(かんきょてい)」も公開する。6月15日まで。

興臨院の庭園は、仙人が住む「蓬莱」を表しているという

製作著作:KBS京都 / BS11

【放送時間】
京都浪漫 悠久の物語
「まだ間に合う 春の特別公開を見に行く」
2025年5月12日(月) よる8時~8時53分
BS11(イレブン)にて放送

旅行読売
(2025年6月号より転載)

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