ここからしか見えない京都
  

読んで楽しむ 京都の1日は朝食から 旅気分を高めるお店リスト

これまでご紹介してきたスポットの中から、ジャンル別におすすめをピックアップしてお届けする、おすすめリスト。第3回は、早起きして出かけたい朝食スポットをご紹介します。朝ごはんをどこで食べるかというのは、京都歩きの楽しみの一つ。喫茶店のモーニングや正統派の和食、独自のセンスやコンセプトが光る旬のカフェなど、朝食が特別なイベントになる店ぞろいです。

■暮らすように、小さな旅にでかけるように、自然体の京都を楽しむ。朝日新聞デジタルマガジン&Travelの連載「京都ゆるり休日さんぽ」はそんな気持ちで、毎週金曜日に京都の素敵なスポットをご案内しています。 (文:大橋知沙/写真:津久井珠美)

※営業状況が変更されている場合があります。ご注意ください。

テーブルの上の風景は、パリの屋根裏部屋の朝食

ドリップしたてのコーヒーをテーブルで注いでくれる。豆は浅煎り、深煎りから選ぶことができる

パリの屋根裏部屋を訪ねるような、憧れと親密さが同居する空間で朝食をいただける「ル・カフェ・ド・ブノワ」。路地一本分の店内にしつらえた4席だけのテーブルに、映画のワンシーンのようなセットが次々と運ばれてきます。バターのじゅわりと溶けたトースト、ふわふわのミルクに注がれるコーヒー、色とりどりのフルーツは季節に合わせて。端正なテーブルウェアや優雅に卵の殻を割るエッグスタンドなど、「食べる」所作や時間一つひとつに心が満たされます。

1日10食限定の「Parisのカフェセット」(3190円、税込み)。日本の飲食店で提供する店はわずかというソシソンセック(乾燥ソーセージ)のほか、厳選したパリの食材が並ぶ

「フランス人の朝食は、栄養価の高いフルーツにカフェオレ、バターたっぷりのパンが定番。そんなパリスタイルの朝食を体験していただけたら」

そう語るのは、店主の都木里江子さん。何度もフランスに足を運び、屋根裏部屋のようなホテルを拠点に探し求めた食のかたちが、この店の世界観の原点になりました。定番の「Parisのカフェセット」のほか、季節や行事に合わせた限定メニューもたびたび登場。自分自身をねぎらいもてなす、心潤すひと時を過ごすことができます。

ル・カフェ・ド・ブノワ
https://www.instagram.com/le_cafe_de_benoit/
■紹介記事はこちら
https://www.asahi.com/and_travel/20201009/286501/

和食派に 素材を極めた、すし屋の実力メニュー

土日限定の「朝ごはん」(2800円)、ごはんをまぐろの漬け丼に変更も可能(3300円、いずれも税込み)。春はふきのとうの天ぷら、夏はハモといった季節の一品も付く

姿勢を正し、すがすがしい気持ちで「いただきます」と手を合わせたくなる正統派和食の朝食がこちら。食通の間で評判の高級すし店「すし処 満」が土日限定で提供する朝食は、焼きサケ、みそ汁、ごはんにふりかけ、お漬物といった、和食の定番をストレートに極めた一膳です。

力強い風味のネタが評判のすし処。朝食は要予約。朝食でその味に魅せられ、夕食に訪れる人も多い

シンプルで王道ゆえ、ごまかしのきかない献立は、大将の梅原章さんの腕の見せどころ。濃厚な脂の「トキシラズ」は炭火でじっくりと焼き上げ、つややかなごはんはすし飯に使うものと同じ山形の有機栽培米「つや姫」、3種のふりかけはどれも自家製と、素材の吟味と手間を惜しみません。「『自分やったらこういうもんが食べたい』と思う献立をかたちにしました」と自信をのぞかせるのも納得。なじみ深い日本の朝食がもたらす、ほっとするような安心感と、極上の素材の奥深さを同時に味わってみてください。

すし処 満
https://www.kyoto-man.com/
■紹介記事はこちら
https://www.asahi.com/and_travel/20190111/27085/

旅と日常が交差する、名喫茶の朝時間

店舗限定の「京の朝食」(1480円、税込み)は午前11時まで提供。コーヒーはミルク入りが定番だが、別添えにしてもらうことも可能

定番中の定番ながら、やはりここが落ち着くという人も多いのではないでしょうか。「イノダコーヒ本店」でいただく朝食は、吹き抜けの空間やガラス張りの窓から眺める中庭、ギンガムチェックのテーブルクロスがすがすがしいもの。焼きたての半熟スクランブルエッグにクロワッサンといった、ホテルさながらの朝食を喫茶店で再現した「京の朝食」は、気持ちのよい1日のスタートを約束してくれるようなメニューです。

吹き抜けの空間が心地よい本館、開業時の店舗を復元したレトロな雰囲気の旧館・メモリアル館があり、空席があればどちらか選ぶことができる

京都を訪れるたびに決まって立ち寄るという人、お気に入りの定位置でコーヒーを飲む常連客、初めての来店に浮き立つ旅行客。旅の人と地元客が同じ空間で時を過ごす京都らしさと、付かず離れずの心地よい接客が居心地の良さの理由。名物のミルク入りコーヒーを飲みながら、旅と日常が重なり合う光景を眺める朝は「イノダ」ならではの時間です。

イノダコーヒ本店
https://www.inoda-coffee.co.jp
■紹介記事はこちら
https://www.asahi.com/and_travel/20180525/13173/

貸し切りレストランで、心は海外へ。旅気分に満たされる

こちらは「トルビアック」の空間。極彩色の配色やミリタリーのインテリアがおもしろい

最後に、扉を開けた瞬間、京都からさらなる旅へと連れ出してくれる料理店をご紹介します。フランス料理店「ビストロ ベルヴィル」とタイ料理店「トルビアック」。2つのレストランが1つの厨房(ちゅうぼう)を挟んで隣り合う、ユニークなスタイルのこの店では「旅する朝食」としてそれぞれの国の料理をコースで味わうことができます。

「ビストロ ベルヴィル」の「旅する朝食」(コース5000円、税込み)より、選べるメインの一つ「クロックマダム」

ここで出されるのは、洗練されたフレンチや日本人向けにアレンジされたエスニックではなく、その土地の風土や文化が薫る郷土料理。旅好きの店主が現地で味わい、エピソードとともに供される一品は、運ばれてくるたびに異国の街を旅しているように感じさせてくれます。一店一組限定の完全予約制なので、プライベートな時間をたっぷりと楽しめるのもうれしい。自由に海外旅行に出かけるのが難しい今、ひと時の旅気分を味わってみてください。

ビストロ ベルヴィル/トルビアック
http://jajouka-kyoto.jp
■紹介記事はこちら
https://www.asahi.com/and_travel/20180608/13461/

朝の風景には、その街特有の生活のリズムが刻まれています。人々の話し声やコーヒーカップを置く音、炊きたてのごはんの湯気、窓の外の道をゆく人々……。普段は気に留める余裕のないそれらを、じっくり味わうのも旅の朝の醍醐(だいご)味の一つ。お気に入りの朝食の店を見つけたら、京都を訪れるたびに朝のひと時を過ごしたくなるはずです。

この記事を書いた人
大橋知沙 編集者・ライター
 
東京でインテリア・ライフスタイル系の編集者を経て、2010年京都に移住。 京都のガイドブックやWEB、ライフスタイル誌などを中心に取材・執筆を手がける。 本WEBの連載「京都ゆるり休日さんぽ」をまとめた著書に『京都のいいとこ。』(朝日新聞出版)。編集・執筆に参加した本に『京都手みやげと贈り物カタログ』(朝日新聞出版)、『活版印刷の本』(グラフィック社)、『LETTERS』(手紙社)など。自身も築約80年の古い家で、職人や作家のつくるモノとの暮らしを実践中。  
この記事の写真を撮影した人
津久井珠美 写真家
 
大学卒業後、1年間映写技師として働き、写真を本格的に始める。 2000~2002年、写真家・平間至氏に師事。京都に戻り、雑誌、書籍、広告など、多岐にわたり撮影に携わる。  

朝日新聞デジタルマガジン&Travelより転載
(掲載日:2021年3月19日)