ここからしか見えない京都
  
画像素材:PIXTA

二十二回目「都をどり」

先日もらくたびさんとのツアーイベントを行いました。
今回は、『都をどり』を鑑賞し、その後にホテルでランチというツアーです。

さて、この『都をどり』。
私は京都に来るまで、『都をどり』の名前すら、聞いたことがなく、どんなものなのかまったく分かっていませんでした。

もしかしたら、私のような人もいるかもしれないので説明をさせていただきますね。

『都をどり』は、毎年4月1日~30日にかけて、京都の祇園甲部歌舞練場で開催される、祇園甲部の芸舞妓さんたちの舞踏公演です。
『いちげんさんお断り』という言葉がある京都の花街で、普段は会うことができない芸舞妓さん総勢約60名の華麗な舞を、劇場形式で観ることができます。

今回のツアーに参加してくださった皆さんは『都をどり』が気になりつつ、自分だけで参加するのはハードルが高く
「望月&らくたびさんのイベントなら!」
と思ってくださった方々が申し込んでくださったそうです。
私のイベントを通して新しい体験をしていただけるのは、とても喜ばしいことです。

イベントに参加できなくても、エッセイを読んで疑似体験していただけたらそんな嬉しいことはありません。
というわけで、今回は『都をどり』のレポートをお届けします。

『都をどり』が行われる『祇園甲部歌舞練場』は、花見小路通を南へ下った先にあります。

建物の中に入り、まず見えてきたのが、今年の衣装が展示されている様子。
衣装は、京友禅と西陣織の匠の手による逸品で、毎年新作をあつらえるそうです。

着物の裾模様は『蛇篭に橋のある景』という題で、清らかに厄を流す流水と、魔除けを意味する蛇篭をあわせ、松竹梅の四季の草花があしらわれています。
鮮やかな青が、目に眩しいほどですね。

ここでは、記念撮影やお土産コーナーもあり、多くの人で賑わっていました。

そこを抜けて、抹茶と茶菓子をいただけるお席へと移動します。
ここでは、芸舞妓さんがお茶を点てている姿を眺めながら、お饅頭とお抹茶をいただくことができます。

その時の芸舞妓さんの姿がとても美しく写真をお見せしたかったのですが撮影NGということで、残念です。
お饅頭は、とらやで団子の模様が入ったお皿に載っていました。
ちなみにこのお皿はお土産として持ち帰れます。

そうして、いよいよ舞台へ。
開演までは舞台の写真を撮って良いそうで、遠慮なく撮らせていただきました。
赤い提灯が並ぶ和風の舞台は、独特の情緒があります。

今回の演目は
第一景 置 歌(おきうた)
第二景 西本願寺梅花揃(にしほんがんじばいかぞろえ)
第三景 猩々福舞(しょうじょうふくのまい)
第四景 祇園祭祝鷹山(ぎおんまつりいわいたかやま)
第五景 織姫彦星七夕語(おりひめひこぼしたなばたがたり)
第六景 渉成園紅葉水鏡(しょうせいえんもみじみずかがみ)
第七景 茶屋座敷雪見舞(ちゃやざしきゆきみのまい)
第八景 八阪神社霞桜(やさかじんじゃかすみのさくら)

まず、第一景の『置歌』は序曲。
背景は、銀襖です。
「都をどりはー」「ヨーイヤサー」の掛け声とともに芸舞妓さんが華やかに登場し、銀襖の前で、舞い踊ります。

第二景の『西本願寺梅花揃』
背景は、梅が咲く誇る西本願寺。
今年は親鸞聖人、生誕850年という節目の年で、京都では京都国立博物館をはじめ、様々なところで親鸞聖人の催しを行っています。
この『都をどり』でも親鸞聖人を祝った演目を披露していました。

第三景の『猩々福舞』
背景は中国の揚子江。
能に「猩々」という演目があるのですが、猩々福舞は、それを基にした舞台です。
(中国を舞台にした、祝いの演目)
真っ赤な能装をまとって猩々となった芸舞妓さんたちが、祝賀の踊りを披露してくれます。

第四景 『祇園祭祝鷹山』
背景は、祇園祭の山鉾と提灯。
昨年、鷹山が196年ぶりに山鉾巡行へ復帰しました。
その復活を祝ってなのでしょう、今年は祇園祭の演目が入っていました。

第五景 『織姫彦星七夕語』
背景は、天の川
馴染みの織姫と彦星の伝説が演目なっていて、
「あっ、知ってる話だ」
とついつい、テンションが高くなってしまいます。

第六景 『渉成園紅葉水鏡』
背景、東本願寺。
第二景と同様、こちらも親鸞聖人の生誕を祝った演目です。
こちらは、東本願寺・渉成園を舞台に、秋の美しさを表現していました。

第七景 『茶屋座敷雪見舞』
背景は祇園・一力茶屋。
花見小路の入口に、赤い壁が印象的な『一力』といういちげんさんお断りの茶屋があります。
こちらの演目は、そんな一力茶屋が舞台。
冬、雪がしんしんと降る茶屋で、芸舞妓さんたちがしっとりとした座敷舞を披露してくれました。

第八景 『八阪神社霞桜』
背景は、八坂神社。
これまで、雪の夜だったのですがパッと照明が明るくなり、舞台は桜で埋め尽くされた春になり、芸舞妓さんたちが華やかな春の舞を見せてくれます。
これまで登場した、猩々、織姫や彦星たちも姿を現わし
いよいよ、クライマックスを迎えて舞台は幕を閉じます。

非日常を体験できた私たちは、
「素敵だったね」「夢を見ていたみたい」
と、大興奮のまま、舞台を後にしました。

実は『都をどり』、私は二回目です。
京都に来て間もない頃、義母にチケットをいただき、舞台を観てきました。
当時は、京都のことがよく分からなかったので、『都をどり』を観ても、ピンと来なかったのですが、今回は、お囃子を耳にした途端に、『祇園祭だ』と分かったり、憧れの『一力』さんの中は、あんな感じなのかな?と想いを馳せたり、『都をどり』は、時事ネタが織り込まれているのを感じ取ったりと、あの頃よりもずっと、『都をどり』を楽しむことができました。

ひとつ後悔しているのは、今回、イヤホンガイドを借りなかったことです。
『今回は踊りだから、ガイドはなくても良いかなぁ』
と、思ってしまったのですよね。

イヤホンガイドがあった方が何倍も楽しめたと思うので、
『都をどり』や『南座』の舞台はイヤホンガイドは必須でいこう!
と心に誓った私でした。

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5月10日発売
『京都 梅咲菖蒲の嫁ぎ先』(PHP文芸文庫)
よろしくお願いいたします。
イラスト:久賀フーナ先生

この記事を書いた人
望月麻衣
 
京都在住の道産子。もの書き。 『京都寺町三条のホームズ』(双葉社)『わが家は祇園(まち)の拝み屋さん』(KADOKAWA)『京洛の森のアリス』(文藝春秋)『太秦荘ダイアリー』(双葉社)など書籍発売中。  
 

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