ここからしか見えない京都
  

いまもなお神秘に包まれる天橋立へ

京都府北部にある天橋立は、松島(宮城県)、宮島(広島県)と並ぶ「日本三景」の一つとして知られる観光スポット。有名なのが足の間から天橋立を見る「股のぞき」だ。天地さかさまで見ると、あたかも龍が天を舞っているように見えることから「飛龍観」と呼ばれ、ふつうに立って眺めるのとはまた違った風景が楽しめる。

曲がりくねった地形がちょうど龍が飛んでいるように見える「飛龍観」

さらに白砂青松の天橋立が、年に数回だけ幻想的な姿を見せる。それは冬の寒い朝、凍った松葉に新雪が積もり、真っ白に雪化粧にされたときだ。太陽が昇り暖かくなると消えてしまうことから「幻雪の飛龍観」と呼ばれている。

冬の天橋立。あたり一帯が白く染まり、より神秘的な景観に  画像素材:PIXTA

奈良時代に編纂された「丹後国風土記」には、天橋立にまつわる昔話も記述されている。それによれば、イザナギノミコトが天界と下界を結ぶためにはしごを作って立てておいたが、寝ている間にはしごが倒れてしまった。その後、残った架け橋が天橋立と呼ばれるようになったという。

また天橋立創造の神話がもう一つ残されている。国造りを行っていた神代のころ、この地は龍神に占領され、人が住むことができなかった。そこで神々は相談し、中国の五台山から文殊菩薩を招き、菩薩の千年間の説法によって改心した龍神が土を置き、天橋立を作ったとも。その文殊菩薩を本尊とするのが天橋山知恩寺だ。知恵の神様として知られ、合格を祈願する受験生が多く訪れる。

さらに、室町時代に雪舟が描いた水墨画「天橋立図」(国宝・京都国立博物館蔵)も謎に包まれた一枚なのだとか。21枚の紙をつないだ一畳ほどの巨大な絵は、依頼主が不明なこと、山上よりも高い鳥瞰的な視線や、画中の書き込みの不自然さなど、研究者にとって不合理な点が多いという。雪舟が残した傑作は、天橋立の神話性を一層高めてくれる。

「天橋立図」雪舟 筆(複製※原画は国宝、2020年12月に京都府立丹後郷土資料館にて撮影)

【放送時間】
京都浪漫 悠久の物語
「冬の京都・昔ばなしの旅~浦島太郎や最強の鬼伝説を生んだ地へ~」
2022年1月10日(月) よる8時~8時53分
BS11(イレブン)にて放送

この記事を書いた人
旅行読売出版社 メディアプロモーション部
 
月刊「旅行読売」は創刊55周年を迎え、日本で一番歴史のある旅行雑誌。国内外に地域の魅力を発信して、交流人口を増やすことで、地域の発展に貢献することを目指しています。毎月28日発売。  
 

タグ一覧

#人気ワード