ここからしか見えない京都
  

歌に詠まれた紅葉の名刹をめぐる

その昔、天皇や平安貴族は都の美しい秋を歌に残した。今も昔も京都の紅葉の名所といえば渡月橋。橋から見て右手に見えるのが小倉山、左手に見える山が嵐山だ。小倉山の麓にある二尊院は、「紅葉(もみじ)の馬場」と呼ばれる約100メートルの長い参道が有名だ。総門からまっすぐに伸びる参道沿いには、モミジとソメイヨシノが交互に植栽され、赤や黄色の色鮮やかな紅葉のトンネルができる。小倉百人一首にもある藤原忠平の「小倉山 峰のもみぢ() こころあらば 今ひとたびの 行幸(みゆき)待たなん」(小倉山の峰の美しい紅葉よ。もし、お前に心があるのならば、もう一度、天皇の行幸がある時までどうか散らないで待っていてくれないか)の歌が、紅葉の美しさを物語る。

紅葉の美しさから多くの歌人が歌を残した二尊院

もう1カ所、紅葉の名所として知られるのが東山区にある東福寺だ。室町時代、東福寺の僧侶であった明兆(みんちょう)は見事な大涅槃図を描き、将軍・足利義持(あしかがよしもち)から褒美をもらう代わりに境内の桜の木を伐採してもらったという逸話が残る。桜が咲くと遊興の地になるため、修行の妨げになるというのが理由だ。そのため紅葉する樹木が残り、なかでも本堂から開山堂を結ぶ通天橋からの眺めは圧巻だ。通天橋下にある「楓の庭」には、江戸時代の俳人で、東福寺の住職も務めた虚白の句碑「受けてまつ 手をすれすれに散る紅葉(もみじ)」(手を受けて紅葉が散るのを待っているのに、手をすり抜けて落ちてしまった)が立つ。

東福寺の通天橋から眼下に望む紅葉の風景は、まるで雲海のようだ

紅葉の穴場といえば、高倉天皇の側室、小督局(こごうのつぼね)ゆかりの清閑寺だ。小督局は、天皇との悲恋が『平家物語』に描かれ、のちに謡曲「小督」にもなった人物。モミジが大好きだったという小督局の供養のため、江戸時代に境内一帯にモミジが植えられ、よりいっそう美しい紅葉の名所となった。

伽藍に寄り添うように色づく清閑寺のモミジは、奥ゆかしさを感じさせる

制作著作:KBS京都 / BS11

【放送時間】
京都浪漫 悠久の物語
「歌で巡る京の秋景色~渡月橋・二尊院・東福寺・清閑寺~」
2022年11月14日(月) よる8時~8時53分
BS11(イレブン)にて放送

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