町衆の暮らしを支えてきた京町家。今回、常盤貴子さんは京町家の暮らしを訪ね、その伝統を次の世代につなごうとする人々と出会います。
間口が狭く、奥に長い、いわゆる「うなぎの寝床」と呼ばれる京町家には、他にもいくつか特徴があります。通りに向かって設けられた「通り庇」、端が切り落とされたように真っすぐに揃えられた「一文字瓦」、室内に光を取り入れるだけでなく、防犯の役割を担う格子窓、腰掛け代わりになる「ばったり床几」など、伝統的な生活文化から生まれた京都ならではの意匠、形態を持っています。
常盤さんが訪れたのは、築120年の小島家。当主の富佐江さんは、京町家の保全・再生を目指す「京町家再生研究会」を発足。京町家の生活・暮らしを未来に伝えていくために様々な活動を行っています。
三方が山に囲まれた京都の夏は厳しい暑さで知られています。小島家でも襖や雪見障子などの建具を、夏向きに入れ替える恒例の「建具替え」を行います。「(エアコンのように)皮ふで感じるのとは違って、目とかいろんなものを使って夏の涼しさを感じさせる機能がある」と富佐江さん。建具替えはクーラーも扇風機もない時代、蒸し暑い京都の夏を少しでも心地よく過ごすため、先人が考えた納涼の工夫のひとつです。
小島家の夏の建具として活躍するすだれは、創業約140年の京すだれ専門店、久保田美簾堂が手作業で仕上げたものです。すだれは目隠しの役割をしながら、風通しをよくし、京町家での夏の暮らしには欠かせません。久保田美簾堂のすだれは、厳選した琵琶湖・近江八幡産のヨシを使用することも。5代目の久保田晴司さんは「向こうが見えるようで見えない“透け感”。見た目の涼やかさや、あるいはクーラーの効き目を補助する使い方もある」と京すだれの魅力を語ります。
京扇子の専門店「大西常商店」も大正年間に建てられた京町家のひとつ。時代を経る中で改築が重ねられましたが、4代目若女将の大西里枝さんの両親が、建築当時の姿に戻す大改修を決断しました。
代々受け継がれている大切な京町家を必死に守ろうとする両親の姿に、里枝さんも京町家の魅力を再認識し、後世に受け継ぐ責任を自覚してクラウドファンディングで改修費用を募るといった取り組みを行ったそうです。次回の改修を200年後に決めており、「先の長い話ですが、子どもたち、孫たちにしっかり(京町家の大切さ)を伝えていくのが仕事」と里枝さん。現在、広さ100坪の京町家は、誰でも利用できるように投扇興や扇の絵付けなどの文化体験、能や上方舞など、扇子を使う伝統芸能の稽古場として貸し出しています。京都の町衆が守る大切な宝、京町家を訪ねてみてはいかがでしょう。
【次回放送情報】
■京都画報 第10回「京町家 夏のしつらい」
BS11にて7月20日(水)よる8時~放送
※ 放送後、BS11オンデマンドにて7月20日(水) よる9時~ 2週間限定で見逃し配信いたします。