ここからしか見えない京都
  
©KBS京都/TOKYO MX/BS11

芸術性あふれる名庭をめぐる

建物と庭園が調和した“庭屋一如”

京都には長い歴史の中で育まれてきた庭園が、いくつも存在します。そこで今回は芸術の秋にふさわしく、作庭家の小川勝章さんとともに常盤貴子さんが芸術家ゆかりの庭園をめぐります。

東本願寺の飛地境内地にある庭園「渉成園(しょうせいえん)」(国の名勝)は1641年(寛永18年)、徳川三代将軍・家光から寄進された土地に、家康の家臣で、文人としても名高い石川丈山(じょうざん)が作庭したと伝えられています。約1万坪の敷地には、大小2つの池と茶室が数棟、仏を祀る持仏堂と書院群で構成。生垣にカラタチが植えられていたことにちなみ、カラタチの別名・枳殻(きこく)から「枳殻邸」とも呼ばれています。江戸時代後期、儒学者で漢詩人の頼山陽(らいさんよう)が著した『渉成園記』の中で、茶室の蘆庵(ろあん)や塩釜の手水鉢(ちょうずばち)などの庭園の見どころを“渉成園十三景”として紹介しました。

渉成園の塩釜の手水鉢の前で。つくばう(しゃがむ)ことで見える景色の素晴らしさを作庭家の小川さんが解説する ©KBS京都/TOKYO MX/BS11

東山の静かな路地裏にある「並河靖之七宝(なみかわやすゆきしっぽう)記念館」には小川さんのご先祖、7代目小川治兵衛(じへえ)が手掛けた庭が残されています。並河靖之氏は明治維新後に七宝に出会い、その後、国内外の博覧会で受賞を重ね、その名は世界中に響き渡りました。その頃、並河氏は現在記念館になっている自宅と工房の新築に着手し、当時、新進気鋭の治兵衛さんに作庭を依頼したのだとか。七宝焼の研磨用に引き込んだ琵琶湖疏水を引き込んだ池泉回遊式庭園は、建物と庭園が調和した“庭屋一如(ていおくいちにょ)”となっています。

庭をたっぷりと堪能できる特等席は、庭に張り出している母屋の廊下南東角。東側と南側の庭が融合し、270度のパノラマが楽しめるのだという ©KBS京都/TOKYO MX/BS11

芸術家の美意識を反映した池泉回遊式庭園

「並河靖之七宝記念館」にほど近い岡崎地区には経済界の重鎮が建てた別荘が多く、7代目小川治兵衛はそれらに琵琶湖疏水を利用した庭を造成しました。その中の一つが「白河院」。現在は「京都 白河院」の名で旅館が営まれています。琵琶湖疏水を引き入れた池泉回遊式の山水庭園は南北に細長く、東に植栽されたアカマツやイロハモミジ越しに東山を望むように設計。“関西近代建築の父”こと武田五一設計の数寄屋造りの建物と調和し、日本情緒たっぷりです。

白河院の山水庭園。7代目小川治兵衛の円熟期の作で、琵琶湖疏水を引き入れた庭の骨格や滝石組、沢渡石などに7代目の特徴がよく表れているという ©KBS京都/TOKYO MX/BS11
京都市役所など数多くの名建築を手掛けた、建築家・武田五一の設計による数寄屋造りの白河院 和館 ©KBS京都/TOKYO MX/BS11

銀閣寺の参道沿いにある「白沙村荘(はくさそんそう) 橋本関雪記念館」は、明治から大正、昭和にかけて活躍した日本画家・橋本関雪の邸宅。約3000坪の敷地に関雪自らが設計した母屋や画室、茶室、持仏堂などの建屋と、国の名勝である池泉回遊式の庭園が広がります。庭園西側に併設されている美術館の2階テラスからは、東山三十六峰のうち送り火の大文字で有名な如意ヶ嶽を含む五峰を一望できます。庭園と美術館をめぐり、関雪の美意識の世界にじっくりと浸ってみてはいかがでしょう。

関雪が設計した大画室「存古楼(ぞんころう)」。ここで関雪は、代表作となる数多くの大作を制作した。庭の木々、池に映る山の影、水面の光といった美しさを味わうことができる ©KBS京都/TOKYO MX/BS11

【次回放送情報】
■京都画報 第26回「秋の京都で名庭めぐり -芸術家が愛した理想郷-」
BS11にて11月13日(月)よる7時00分~7時55分放送
出演:常盤貴子

※ 放送後、BS11+にて11月13日(月)よる8時~ 2週間限定で見逃し配信いたします。

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