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画像提供:公益財団法人 鷹山保存会

祇園祭鷹山 山鉾巡行復帰は“スタート地点”

世界を震撼させたコロナ禍の影響は祇園祭にも暗い影を落とし、2020年から2年間、山鉾巡行、宵山が中止となりました。そして2022年、規模は縮小されながらも3年ぶりに主要行事が執りおこなわれた祇園祭で、明るい話題が注目を集めることに。「後祭(あとまつり)」の山鉾巡行への、約200年ぶりとなる鷹山の復活です。2019年以来の「通常開催」となる今年の祇園祭、「今年こそは鷹山の勇姿を目に焼き付けたい」という方も多いことでしょう。鷹山復活までの道のりはどのようなものだったのでしょうか。

写真はお囃子の演奏に用いる鉦(かね)

鷹山の歴史は古く、過去の資料から、応仁の乱(1467)以前に山鉾巡行に参加していたことが確認できるそう。ところが文政9年(1826)の大雨により曳山(ひきやま)を覆う装飾である懸装品(けそうひん)が大きく損傷し、この年を最後に、鷹山は祇園祭の表舞台から姿を消すことに。また元治元年(1864)の「蛤御門の変」による火災により、曳山本体や装飾の大部分を失うこととなってしまいます。

復興への活動が本格的に始動したのは、「鷹山の歴史と未来を語る会」が結成された2012年。復興を志したものの、曳山に乗せる3体のご神体人形など、町内に残されていたものはごく僅か。その上、会が発足した当初は構成メンバーも数名程度でした。
2年後の2014年には、「祇園囃子」を奏でる囃子方(はやしかた)が結成されますが、肝心のお囃子が1曲も残っておらず、演奏に用いる道具もほぼ皆無。極めて前途多難な状況でしたが、2015年に鷹山保存会を発足させるなど、一歩一歩着実に歩みを進めていきました。お囃子は北観音山の囃子方メンバーを招き入れ、北観音山に伝わるものをベースに新調。今では30曲ほどが演奏されるまでに。イベント等での出張演奏などを積み重ねることによって、鷹山の名前は徐々に再認知されるようになり、巡行復帰に向けての周囲からの期待も高まります。数名からスタートした鷹山復興プロジェクトも、今では保存会役員20名をはじめ、300名近くに及ぶそう。

曳山の再建に向け、2016年、祇園祭山鉾連合会が調査を実施。絵図や文書などを紐解き、在りし日の姿が少しずつ描き上がっていきます。そして2018年に、復元図・設計図が完成。当時は、2026年の山鉾巡行復帰を計画していたそうですが、最終的には4年前倒しし、2022年に壮麗な曳山を伴って、都大路を練り行くこととなります。

写真は2022年5月に行われた巡行リハーサル時のもの

コロナ禍に揺れる前の2019年、曳山を伴わない「唐櫃(からびつ)巡行」という形で、山鉾巡行へ復帰。本格復帰への機運はさらに高まり、2020年にいよいよ曳山の再建にとりかかります。
屋根の上に立てる真松も含めると高さ約17メートル、重さは約10トンにも及ぶという巨大な曳山の再建には、非常にたくさんの木材を中心とした部材が必要になりましたが、翌2021年には、曳山の大部分が完成。翌年の山鉾巡行復帰がいよいよ現実味を帯びることとなりました。

約200年近く、山鉾巡行から姿を消していた鷹山。保存会メンバーの多くは、祭りの運営に関しては素人と言っても過言ではありませんでした。巨大な曳山を引いたり、交差点(辻)では辻回しと呼ばれる方向転換をしたりと、巡行におけるノウハウの習得も必要不可欠。当初は、2022年の巡行復帰前の数年間、他の山鉾の巡行への参加を通して、技術の向上を図ろうとしましたが、ここで思わぬ妨げとなったのが新型コロナウイルスの感染拡大でした。コロナ禍により、2020年から2年間、山鉾巡行は山と鉾を伴わない、関係者のみが歩く形で実施されることに。そこで鷹山では、月に1度集まりの場をもったり、他の山のメンバーを招いて指導を仰いだり、巡行に向けての技術の習得を行うこととなりました。

2022年7月24日。沿道からひと際の注目を集める鷹山が、まだまだ真新しい曳山を伴い、都大路を堂々と巡行しました。鷹山保存会の理事長である山田純司さんは当時をこう振り返ります。「巡行への復帰は鷹山メンバーの念願でしたが、ご協力いただいた他の山鉾町からの期待感も非常に感じていました。その分、巡行中も、巡行が無事に終えられるか非常に緊張していましたが、沿道からの温かいご声援もいただき、メンバーともども集中力を切らすことなく完遂できたと思います」と。そしてこう続けます「巡行には復帰できましたが、ここがスタート地点であり我々の復興はまだまだ続きます」。

画像提供:公益財団法人 鷹山保存会

山田さんがおっしゃるとおり、山鉾巡行への復帰がゴールではありません。「いったんは」完成したものの、まだまだ曳山を彩る装飾などこれからも復元作業は続きます。今年春には、山に搭乗する3体のご神体人形「犬遣(いぬつかい)」「鷹匠(たかじょう」「樽負(たるおい)」が身につける装束が、文献資料等をもとに新調されました。
「昨年は、無事に山鉾巡行が行われたものの、コロナ禍の影響で京都にお越しになれなかった方も多いと思います。『今年こそは鷹山を』、という方もいらっしゃると思いますので、ぜひ我々の姿をご覧いただければと思います。また、巡行への復帰は“スタート地点”です。鷹山の復興は、次の世代、またその次の世代へと続きますので、今後にもぜひ注目していただきたいですね」と、山田さん。
鷹山がお目見えする後祭の宵山は7月21日(金)~23日(日)、そして山鉾巡行は24日(月)に開催予定。

4年ぶりに通常開催される祇園祭。7月の1ヶ月間を通して様々な行事が行われますが、特に注目される「前祭(さきまつり)」の宵山・山鉾巡行は、今年は週末・祝日にかけて開催されます。
祇園祭にお目見えする34の山鉾のうち、23基は前祭で登場。絢爛豪華な懸装品に彩られた山鉾が巡行する光景は「動く美術館」とも形容されますが、大型の鉾が多く登場する前祭の巡行は見る者を圧倒します。前祭の山鉾巡行は7月17日(月・祝)に開催。

【放送時間】
生中継 祇園祭山鉾巡行 前祭・後祭2023
【前祭】2023年7月17日(月・祝)午前9時00分~11時29分
【後祭】2023年7月24日(月)午前10時00分~11時29分
BS11(イレブン)にて放送

制作著作:KBS京都 / BS11

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京都の特等席 編集部

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