ここからしか見えない京都
  

絢爛な桜と歴史に思いを馳せる

寺社には数多くの花々が季節ごとに彩りを添え、参拝客の目を楽しませてくれる。これからの見ごろはなんといっても桜だ。

京都を代表する桜のスポットといえば、哲学の道は欠かせない。日本画家の橋本関雪の妻が大正時代に植えたという約300本の桜が琵琶湖疏水沿いに続き、満開のときは桜のトンネルができる。哲学の道の近隣には、桜の名所として知られる神社仏閣も多い。

疏水が桜色に染まる哲学の道 / © 中田昭

哲学の道を銀閣寺から南禅寺方向にゆっくりと足を延ばせば、途中に谷崎潤一郎の墓がある法然院を見つけることができる。墓地の頭上では1本の見事なシダレザクラが華麗に咲き誇る。

谷崎潤一郎の墓地に咲くシダレザクラ / © 中田昭

さらに哲学の道を南に進めば境内の末社に狛犬ならぬ、珍しい「狛ねずみ」が鎮座する大豊神社がある。こちらはタイミングがよければ、鳥居を覆うシダレザクラとしだれ梅の競演が楽しめる。

その少し先にあるのが、仏殿の大屋根がひときわ目を引く光雲寺。徳川幕府二代将軍秀忠の娘、和子の菩提寺だ。庭園に咲き誇る美しい桜もさることながら、和子の人生も非常に興味深い。

灯りに照らしだされる夜桜はどこか妖艶にも見える / © 中田昭

和子は秀忠と浅井三姉妹の三女、江の間に生まれた。わずか14歳で後水尾天皇に輿入れをし、宮中での軋轢に耐えながら実子を天皇に即位させるなど、朝廷と将軍家の間で大きな役割を果たしたという。歴史に翻弄された和子の姿を想像すると、整然とした庭園に絢爛だがどこか儚げに咲く桜と、不思議に重なって見えてくるのだ。

旅行読売
(2021年5月号より転載)