ここからしか見えない京都
  

読んで楽しむ 春の花見歩きを夢見て……「二条城」周辺エリア

これまでご紹介してきたスポットをエリア別にピックアップし、「読んで」京都の旅を楽しんでいただく「空想京都さんぽ」シリーズ。緊急事態宣言が出される地域も増え、旅行やお出かけが制限される今、昨年に続き再び、空想の京都さんぽにお連れします。心おきなく京都に出かけられるようになったら、気になるエリアをどんなコースで巡ろうか、ぜひ参考にしてみてください。第9回は「二条城」エリア。桜の名所でもある元離宮・二条城と合わせて、春のさんぽを夢見てめぐりましょう。

■暮らすように、小さな旅にでかけるように、自然体の京都を楽しむ。朝日新聞デジタルマガジン&Travelの連載「京都ゆるり休日さんぽ」はそんな気持ちで、毎週金曜日に京都の素敵なスポットをご案内しています。 (文:大橋知沙/写真:津久井珠美)

レトロでアットホームな、二条城エリアの名物喫茶

十字路の角地にたたずむ「喫茶チロル」。ノスタルジックな外観をバックに写真を撮る人も

このエリアを散策するなら外せないのが、創業50余年の老舗「喫茶チロル」。朝8時から営業しているので、モーニングをいただいてから観光に出かけるのがおすすめです。三角屋根にストライプのひさし、「COFFEE」の文字が掲げられた外壁が「チロル」目印。昔からの常連客でもある劇団「ヨーロッパ企画」の映画のモデルにもなった、レトロなたたずまいにほっとします。

「玉子サンド」(700円)と「ブレンドコーヒー」(400円)、いずれも税込み

はじけるような笑顔で店に立つのは、常連客から「お母さん」と慕われる、84歳の秋岡登茂(とも)さん。厨房(ちゅうぼう)でもの静かにカレーを煮込み、コーヒーをいれるのは、2代目の誠さん。登茂さんの夫であった先代店主が作り上げた、山小屋をイメージしたあたたかな空間を今も大切に守り継いでいます。「変わらずにここにある」安心感と「チロル」の面々の笑顔に会いたくて、リピートする人もたくさん。一度訪れたらきっとまたすぐに、再び訪ねたくなってしまう魅力があります。

喫茶チロル
https://tyrol.favy.jp/
■紹介記事はこちら
https://www.asahi.com/and_travel/20201023/289903/

古着好き、布好きの心くすぐるヴィンテージショップ

無造作に掛けられた古着や高い棚の上など、すみずみまで凝らされたディスプレーはお気に入りの探しがいがある

ヴィンテージの風合いたっぷりの布やテーブルウェア、経年変化が味わい深い家具などを見つけたいならこちら。店主の杉本康子さんがアメリカやヨーロッパから買い付けた品々が並ぶ「BROWN.(ブラウン)」は、カジュアルで暮らしになじむ、等身大のヴィンテージに出会える店です。

築100年ほどの建物を、土間や梁(はり)を残しつつ改装。ウィンドーの意匠も楽しみの一つ

京都は店主のセンスや審美眼の生きた古道具店が多いですが、中でも「BROWN.」は古着やファブリック類が充実。アメカジ、トラッド、ミリタリーの古着や、現行品にはない手の込んだ織りの生地、それらを使って仕立てたクッションやバッグなど、この店ならではのセレクトと「今」のライフスタイルに寄り添う提案に、時間を忘れて宝探ししてしまいます。

BROWN.
https://brownkyoto.jp/
■紹介記事はこちら
https://www.asahi.com/and_travel/20190906/136007/

骨董や民芸のうつわでいただく、彩りの和食膳

主菜に小鉢2種、サラダ、自家製胡麻(ごま)豆腐、フルーツがつく「好日膳」(1320円・税込み)。写真はリニューアル前。現在は主菜を五色コロッケ、小さな豆腐グラタン、季節の蒸し野菜から選べる

買い物や二条城観光を楽しんだら、少し西側に足を延ばしてランチにしましょう。「民藝と古い器のカフェ FUDAN」は、精進料理からヒントを得た彩り豊かな和食膳をいただけるカフェ。使われている器はどれも骨董(こっとう)や民芸の器で、丁寧に作られた献立にしっくりとなじみます。

和モダンな雰囲気が落ち着く内装。うつわの販売のほか、2階ではヨガやワークショップが開催されることもある

お気に入りのうつわ一つで、日々の炊事のモチベーションが上がることを実感したという、店主の井本潮(しほ)さん。民芸や骨董のうつわの持つ、素朴で暮らしに根ざしたたたずまいに、食を通して出会うきっかけになればと話します。京都で活動する2人の菓子作家、「みのり菓子」「菓舗カワグチ」のお菓子も提供。ランチにカフェにと、普段使いにもぴったりの一軒です。

民藝と古い器のカフェ FUDAN
https://fudan.life/
■紹介記事はこちら
https://www.asahi.com/and_travel/20191122/172559/

「ただいま」と帰りたくなる町家宿へ

どっしりとしたかまどのおくどさん(台所)。うつわや和菓子、お茶などは京都ゆかりの品を選び、ゲストとの会話のきっかけに

町歩きを終えたら、格子戸、虫籠窓(むしこまど)、坪庭など京町家の風情にひたる宿で、旅の疲れを癒やしましょう。「京旅籠(はたご)むげん」は「泊まる」よりも「帰る」という言葉がしっくりくる、アットホームな雰囲気が魅力の町家宿。チェックイン時には季節の和菓子と日本茶で、朝食は昔ながらのかまどで炊き上げたつやつやのごはんでもてなされ、オーナーの永留(ながとめ)和也さん・あふるさん夫妻とのあたたかなやりとりにも心和みます。

ウェルカムスイーツはご近所の「塩芳軒」の季節の生菓子と日本茶で

「お客様に行き先をおすすめする時は、“自分もワクワクすること”を大切にしています」と語る、あふるさん。5室だけの客室は、うち2部屋がお一人様専用のため、あふるさんが一人旅の話し相手になってくれることも少なくありません。旅好きの夫婦が肌で感じた京都の素敵なもの・こと・場所を、飾らずに惜しみなく伝えてくれる。そんな宿だからこそ、帰り際には思わず「また来るね」と口にしてしまいます。

京旅籠むげん
http://kyoto-machiya-ryokan.com/
■紹介記事はこちら
https://www.asahi.com/and_travel/20200214/213674/


春には、城内に約300本の桜が咲き誇る元離宮・二条城。それでいて、このエリアはいかにも観光客向けといった食事処や土産物店は少なく、地元の人々に愛され続ける良店が点在しています。気になるスポットや食べたいものをチェックして、どんな順序でめぐろうか、ぜひ計画してみてくださいね。

この記事を書いた人
大橋知沙 編集者・ライター
 
東京でインテリア・ライフスタイル系の編集者を経て、2010年京都に移住。 京都のガイドブックやWEB、ライフスタイル誌などを中心に取材・執筆を手がける。 本WEBの連載「京都ゆるり休日さんぽ」をまとめた著書に『京都のいいとこ。』(朝日新聞出版)。編集・執筆に参加した本に『京都手みやげと贈り物カタログ』(朝日新聞出版)、『活版印刷の本』(グラフィック社)、『LETTERS』(手紙社)など。自身も築約80年の古い家で、職人や作家のつくるモノとの暮らしを実践中。  
この記事の写真を撮影した人
津久井珠美 写真家
 
大学卒業後、1年間映写技師として働き、写真を本格的に始める。 2000~2002年、写真家・平間至氏に師事。京都に戻り、雑誌、書籍、広告など、多岐にわたり撮影に携わる。  

朝日新聞デジタルマガジン&Travelより転載
(掲載日:2021年1月29日)