ここからしか見えない京都
  

読んで楽しむ ローカルな雰囲気と新旧の店 「四条大宮」エリア

これまでご紹介してきたスポットをエリア別にピックアップし、「読んで」京都の旅を楽しんでいただく「空想京都さんぽ」シリーズ。旅行やお出かけが制限される今、昨年に続き再び、空想の京都さんぽにお連れします。第12回は、繁華街の近くながら、ローカルな魅力にあふれる「四条大宮」エリアです。

■暮らすように、小さな旅にでかけるように、自然体の京都を楽しむ。朝日新聞デジタルマガジン&Travelの連載「京都ゆるり休日さんぽ」はそんな気持ちで、毎週金曜日に京都の素敵なスポットをご案内しています。 (文:大橋知沙/写真:津久井珠美)

※営業状況が変更されている場合があります。ご注意ください。

素朴でレトロでクセになる、コッペパンサンドをテイクアウト

揚げたてのハムカツを挟んだ「カツロール」(220円・税込み)

出勤前に、部活の帰りに、公園で食べる軽食に……。次々と地元の人々が立ち寄る「まるき製パン所」は、1947(昭和22)年創業の昔ながらのパン屋です。名物は、シンプルなコッペパンにハムやカツ、コロッケ、ウィンナーをはさんだ「コッペパンサンド」。近所の学生たちを応援しようと先代が考案し、2代目の木元廣司さんが今も毎日焼き続けています。

メニューに並ぶ「◯◯ロール」はすべてコッペパンサンドのバリエーション

「特段ええ材料を使っているわけではないけど、カツやコロッケ、あんこも手作り、できたてです。食べておいしいのが一番ですから」と語る木元さん。衣がしんなりしにくいようにたっぷりのキャベツを挟んだり、ソースは数種類をブレンドしたりと、ちょっとした工夫を忘れません。ほんのりあたたかいコッペパンサンドは、70余年愛される京都の「街のパン屋」の味です。

まるき製パン所
京都市下京区松原通猪熊西入北門前町740 Tel 075-821-9683
■紹介記事はこちら
https://www.asahi.com/and_travel/20200403/234362/

どんな包丁もよみがえる 「庖丁コーディネーター」におまかせ

モダンで開放的な雰囲気が入りやすい。鍛冶(かじ)職人が造るオリジナルの包丁のほか、ラボ(メンテナンスを行う工房)、キッチンも併設

「手入れをしながら長く使う」道具との付き合い方も、京都らしい文化の一つです。オリジナルの包丁の販売と「庖丁(ほうちょう)コーディネーター」によるプロのメンテナンスを行う「食道具竹上」は、料理好きの間で話題の新店。老舗の包丁店で修業した後、「庖丁コーディネーター」として独立して10年になるオーナーの廣瀬康二さんの元には、研ぎや修理を必要とするさまざまな包丁が集まります。

オーナーの廣瀬康二さん。包丁を預かってのメンテナンスのほか、研ぎ方講習も行う

他社製品でも、ステンレス製の包丁でも「買ったときよりも切れるように、更生する」のが竹上流。包丁のゆがみや反りを調整して研ぎ、最後は必ず天然の砥石(といし)で仕上げます。そうすることで、よく切れつつも刃当たりが優しい「“食材が怖がらない”包丁になるんです」と語る廣瀬さん。良い道具を選び、手入れすることは、食を大切にする心にもつながると気付かされます。

食道具竹上
https://kyototakegami.com/
■紹介記事はこちら
https://www.asahi.com/and_travel/20201218/306211/

歌や物語のイメージが広がる、言葉と和菓子の甘い関係

ショーケースには定番から季節の生菓子が並ぶ。緊急事態宣言中、喫茶は休業。完売次第閉店なので予約がベター

歌や物語からインスピレーションを得た菓銘の和菓子でもてなす「菓子屋のな」。季節を抽象的に表現する京都の和菓子文化をベースに、自由な発想や素材使いを織り交ぜた和菓子店です。代表作である「アントニオとララ」は、森鷗外が9年かけて翻訳したアンデルセン作『即興詩人』へのオマージュとして作られたもの。世界観を知る人には味わい深く、知らない人にはお菓子の風味から物語への想像がふくらみます。

「即興詩人 アントニオとララ」。焦がしキャラメルあんでアントニオを、トロピカルあんでララの人生を表現している

京都で和菓子を学び、控えめな意匠に宿る物語に魅了されたという、店主の名主川千恵(なぬしがわ・ちえ)さん。古典ばかりでなく、映画や文学、歌謡曲から着想を得ることで、新鮮で親しみやすい現代の和菓子を提案してきました。フルーツやハーブなど、従来の和菓子には使われることの少ない素材を積極的に取り入れているところも人気の秘密。香りや言葉をともに味わうような、新しい和菓子の楽しみに心躍ります。

菓子屋のな
https://www.instagram.com/kashiya.nona/
■紹介記事はこちら
https://www.asahi.com/and_travel/20200828/277039/

席についた瞬間から、物語が幕を開けるレストラン

中世の絵画のような大きなテーブルが印象的。予約制でのイートインだけでなく、店先でデリ(総菜)や焼き菓子などのテイクアウト販売も行う

西院方面に足を延ばし、インダストリアルな空間と感性豊かな料理が楽しめるレストラン「Maker」での食事で、締めくくりとしましょう。店主の吉岡慶さんが約3年かけて作り上げたこの店は、真鍮(しんちゅう)製のオープンキッチン、武骨な照明やむき出しの赤い配線コード、100年前のカトラリー跡が無数に残るアンティークの皿など、すべてが映画のワンシーンのような雰囲気です。

ランチ3300円(料理5品、デザート、食後のドリンク)、ディナー4950円(料理6品、食後のドリンク)〜のコースのみ。いずれも税込み

「見たことのない食材ほどワクワクするんです」と語る吉岡さん。珍しい野菜やハーブ、フルーツなども自在に組み合わせ、色、香り、食感といった五感に響く一皿に仕上げます。料理を待つ間、オープンキッチンから漂う調理の音や匂いまでもがごちそうのよう。席についた瞬間から食べ終わったうつわのソースの模様を眺める時まで、ドラマチックな食事の時間に満たされます。

Maker
https://www.makerkyoto.com/
■紹介記事はこちら
https://www.asahi.com/and_travel/20181012/16947/


百貨店や商業施設が並ぶ四条烏丸から一駅の距離ですが、商業施設やチェーン店よりも地元に密着した個人店が多く、どこか懐かしい雰囲気が漂う地域です。変わらぬ味、確かな職人の技にふれつつ、新しい発見や感動にも、きっと出会えるはずです。

この記事を書いた人
大橋知沙 編集者・ライター
 
東京でインテリア・ライフスタイル系の編集者を経て、2010年京都に移住。 京都のガイドブックやWEB、ライフスタイル誌などを中心に取材・執筆を手がける。 本WEBの連載「京都ゆるり休日さんぽ」をまとめた著書に『京都のいいとこ。』(朝日新聞出版)。編集・執筆に参加した本に『京都手みやげと贈り物カタログ』(朝日新聞出版)、『活版印刷の本』(グラフィック社)、『LETTERS』(手紙社)など。自身も築約80年の古い家で、職人や作家のつくるモノとの暮らしを実践中。  
この記事の写真を撮影した人
津久井珠美 写真家
 
大学卒業後、1年間映写技師として働き、写真を本格的に始める。 2000~2002年、写真家・平間至氏に師事。京都に戻り、雑誌、書籍、広告など、多岐にわたり撮影に携わる。  

朝日新聞デジタルマガジン&Travelより転載
(掲載日:2021年2月19日)

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