ここからしか見えない京都
  

読んで楽しむ空想京都さんぽ。納涼床が並ぶ眺めも京都らしい「三条大橋」エリアへ

旅行やお出かけが難しい今、これまで連載でご紹介してきたスポットをエリア別にピックアップし、空想の京都さんぽにお連れします。心おきなく京都に出かけられるようになったら、気になるエリアをどんなコースで巡ろうか、考えるのにぜひ参考にしてみてください。第6回は、鴨川沿いに料亭や居酒屋が軒を連ねる風景が京都らしい「三条大橋」エリア。夏の風物詩でもある鴨川納涼床は、各店感染対策を取りながらの床開きとなりましたが、三条大橋からの眺めや川辺の散歩を楽しむだけでも「京都に来たなぁ」と感じられるエリアです。

■暮らすように、小さな旅にでかけるように、自然体の京都を楽しむ。朝日新聞デジタルマガジン&Travelの連載「京都ゆるり休日さんぽ」はそんな気持ちで、毎週金曜日に京都の素敵なスポットをご案内しています。 (文:大橋知沙/写真:津久井珠美)

読んで楽しむ空想京都さんぽ。第1~5回はこちら
(1)センスの良い個人店が集まる「御所南」エリアへ
(2)旅の起点にも終点にもなる「京都駅」エリアへ
(3)「北野」エリアで甘いもの巡り
(4)「四条・烏丸御池」街なかごはん朝昼晩
(5)自然の心地よい京都のカルチャーエリア「岡崎」へ

※新型コロナウイルスの感染拡大防止のため、営業状況が変更されている場合があります。ご注意ください。

心動かすアートに出会う、絵本とうつわの町家ギャラリーへ

格子窓からさしこむ光やレトロな棚がどこかほっとする空間。不定期で絵本の原画などの展覧会を開催する

三条大橋から少し東の路地にたたずむ「nowaki(のわき)」は、えりすぐりの絵本と手仕事のうつわを扱うギャラリー。町家を改装した一軒家で、靴を脱いで「おじゃまします」と上がる店内は、友人の家を訪れたようなアットホームな雰囲気です。書棚に並ぶのは、同時代で活躍する作家の絵本をはじめ、少部数で発行されるリトルプレスや特装本、「nowaki」から出版するオリジナルの本など。大型書店やオンラインでは出合いにくい、作り手の思いを手渡すような本がそろいます。

絵本だけでなく作家のうつわや雑貨も並ぶ。これらも暮らしのなかで「使える」アートの一つ

「絵本は、一番気軽で年齢を選ばない美術への入り口だと思うんです。絵本の世界から、原画を見るきっかけや、好きな絵を自宅に飾る幸せを知ってもらえたら」

そう語る、店主の菊池美奈さん。「絵を鑑賞する」というとハードルが高く感じますが、作者と読者が同じ時代を生きているからこそ共感できること、想像できることがきっとあるはず。そんな思いで、現代の作家の作品を丁寧に紹介することを大切にしているそう。畳に座って一冊一冊じっくり手に取れば、「この作品好きだな」と、自分の心が反応する本にきっと出会えるはずです。

nowaki(のわき)
https://nowaki-kyoto.net

■紹介記事はこちら
身近なアートへの扉。京都、絵本とうつわの町家ギャラリー「nowaki」

滋味深く体にしみわたる、本場の韓国料理でランチ

カウンター席がメインの店内。食器やお酒も韓国のものが多い

「nowaki」からすぐのご近所さん「ピニョ食堂」は、滋味あふれる優しい味わいの韓国食堂。辛さやニンニクの刺激は控えめに、素材の味が生きた韓国スープを中心としたメニューがそろいます。スンドゥブやソルロンタンといった韓国スープの定番もおすすめですが、これからの季節にうれしいのが夏季限定の「韓国冷麺」。塩漬け発酵させた大根の汁と牛すねのだしを合わせたスープをキン!と半凍りにし、韓国から取り寄せた麺と合わせた、本場の味わいです。

「韓国冷麺」(1100円・税込み)。牛すねスープの冷麺は7月ごろ~9月末ごろの夏季限定。6月現在は鶏スープの冷麺を提供中

トゥッペギと呼ばれる小ぶりの土鍋で運ばれてくるスープ、お水代りに出されるコーン茶、韓国伝統食の副菜や一品料理など、現地さながらの雰囲気は、食事しながら旅気分を味わえるもの。食事のひと時、京都からさらに違う国へと心を旅立たせることができるのも、世界中の文化が集まり磨かれる古都ならではの楽しみです。

ピニョ食堂
https://www.instagram.com/pinyoshokudou/

■紹介記事はこちら
滋味深い韓国料理で夏バテの体をリフレッシュする「ピニョ食堂」

創業200年を超える、看板のない道具店へ

ホウキやタワシのほか、シンプルな玄関マットや口の細い容器などを洗うブラシなど、かゆいところに手が届く道具がそろう

しばし眺めを楽しみつつ鴨川べりを散歩したら、三条大橋を渡ります。三条大橋のたもとにたたずむ、1818(文政元)年創業の暮らしの道具店を訪ねてみましょう。「内藤商店」は、職人の手仕事による棕櫚(しゅろ)のホウキやタワシを扱う店。素朴で簡素なつくりながらも、使い込むほどに味わいを増し、電気も使い捨てシートも不要。長く使えて見た目にも美しいと、老若男女さまざまな人に選ばれています。

キセル型のホウキは高いところの溝汚れなどに最適

おかみの内藤幸子さんは7代目。穏やかな笑顔で実演を交え、海外からのお客様への英語とジェスチャーを組み合わせながらの接客には、思わず顔がほころびます。一つひとつに用途があり、適した素材が選ばれた道具類は、生活の知恵の結晶。それぞれの暮らしに寄り添い、長く付き合える愛用品がきっと見つかります。

内藤商店
075-221-3018
京都市中京区三条大橋西詰
9:30〜19:30 不定休(1月1日〜3日休み)

■紹介記事はこちら
一年の終わりに暮らしを整える 京都「内藤商店」の掃除道具

変わらぬ味で“お迎え”してくれる、古きよき京都の喫茶店

三条大橋から西に向かい、寺町専門店会商店街へ。みやげもの店から香や仏具の老舗、古着屋や最新のスイーツショップまで、多彩な店が軒を連ねる、にぎやかなアーケード街です。その一角で、毎日香ばしいコーヒーの香りを漂わせるのが、1932(昭和7)年に創業した「スマート珈琲店」。落ち着いた雰囲気と変わらぬ味で、地元客から観光客にまで幅広く愛される喫茶店です。

「フレンチトースト」(単品700円、セット1200円・税込み)ミルク液にひたし、直前に卵をまとわせて揚げるように焼き上げる

外はカリッと、中はふわふわの「フレンチトースト」は、ホットケーキやタマゴサンドなどと並ぶ名物。シンプルでスタンダードな味ながらも、食感や焼き加減にこまやかな心配りがなされ、それが「スマートの味」となって記憶に残ります。

「毎日同じことをやっていても、同じ味にはなりません。いつもの味を守るためには、素材や気候などその日の状態によって毎日少しずつ変える。この場所でいつもの味で“お迎えする”という気持ちでやっています」
オーナーの元木章さんはそう語ります。

トレードマークの赤いコーヒー缶や歴代のマッチが飾られた店内に、歴史を感じる

地元の人々にとっても、京都旅行の度に立ち寄る人にとっても、初めて訪ねる人にも、「いつもそこにある」定番の喫茶店。そこに通うことで、私たちも京都の喫茶文化を守る一員になれるはずです。

スマート珈琲店
http://www.smartcoffee.jp

■紹介記事はこちら
年の瀬も新年も。いつものコーヒーで迎えてくれる京都の純喫茶「スマート珈琲店」

歩いているだけでも楽しいにぎやかなエリアながらも、鴨川沿いに出れば柳の木がそよぎ、流れる水のきらめきもすがすがしいのが三条大橋かいわいの魅力。納涼床に明かりがともる、夕景もまた風情があります。京都の夏に思いをはせながら、空想さんぽを楽しんでみてください。

この記事を書いた人
大橋知沙 編集者・ライター
 
東京でインテリア・ライフスタイル系の編集者を経て、2010年京都に移住。 京都のガイドブックやWEB、ライフスタイル誌などを中心に取材・執筆を手がける。 本WEBの連載「京都ゆるり休日さんぽ」をまとめた著書に『京都のいいとこ。』(朝日新聞出版)。編集・執筆に参加した本に『京都手みやげと贈り物カタログ』(朝日新聞出版)、『活版印刷の本』(グラフィック社)、『LETTERS』(手紙社)など。自身も築約80年の古い家で、職人や作家のつくるモノとの暮らしを実践中。  
この記事の写真を撮影した人
津久井珠美 写真家
 
大学卒業後、1年間映写技師として働き、写真を本格的に始める。 2000~2002年、写真家・平間至氏に師事。京都に戻り、雑誌、書籍、広告など、多岐にわたり撮影に携わる。  

朝日新聞デジタルマガジン&Travelより転載
(掲載日:2020年6月5日)

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