ここからしか見えない京都
  

龍神様ゆかりの寺社めぐり

古来、京都には龍穴(りゅうけつ)や龍脈(りゅうみゃく)があるとされ、石清水(いわしみず)八幡宮から、龍にゆかりの神社仏閣を龍の形に巡る「龍神巡り」が盛んだった。なかでも人気が高かったといわれるのが右京区花園にある妙心寺だ。およそ10万坪という甲子園球場の8倍ほどの広大な敷地には、南から北へ大伽藍が整然と並ぶ。隆盛を極めた江戸時代には、塔頭寺院は70を超え、末寺は全国5千カ寺にも達したという。「龍神巡り」で多くの人々がこの寺を訪れたのは、法堂(はっとう)の天井に描かれた狩野探幽による「雲龍図」を見るためだ。拝観ルート入り口から見ると、顎が手前で尻尾が奥になる「下り龍」に。さらに反対側に進んで見上げると、顎が奥に尻尾が手前になる「上り龍」になる。1656年から8年の歳月をかけ、62歳のときに完成させたと伝わる探幽の代表作だ。

狩野探幽が描いた妙心寺法堂の「雲龍図」は、下から見上げると大迫力

東山の月輪山の麓に佇む泉涌寺(せんにゅうじ)は皇室の菩提寺で、日本で唯一「御寺(みてら)」と呼ばれる格式の高さを誇る。大門から降(くだ)り参道を下りた正面にある仏殿は応仁の乱で焼け落ちたが、1668年に徳川家綱によって再建された。内陣の鏡天井に描かれているのは「蟠龍(ばんりゅう)図」。探幽の晩年の力作で、仏殿を守護するように目を見開いている。また現在開催されている「京の冬の旅」の期間中は舎利殿が公開され、京狩野派の2代目当主・狩野山雪が江戸時代の初期に完成させた天井画「蟠龍図」を鑑賞することができる。下で手を叩くと、不思議な残響音があることから「鳴き龍」と呼ばれる。

「京の冬の旅」で特別公開される泉涌寺舎利殿の鳴き龍

1000年以上の歴史を持つ瀧尾神社は、400年ほど前に泉涌寺境内の飛び地に移築された。現在の本殿は、貴船神社奥宮の旧社殿を移築。拝殿にある全長8メートルの龍の彫刻は、江戸時代の彫り物師・九山(くやま)新太郎と弟子たちが製作したものだという。あまりの躍動感から「夜な夜な水を飲みに動き出す」と恐れられ、天井に金網が張られたという逸話が残る。

大丸の創業者が熱心に参拝したことから、仕事運向上のご利益があるといわれる瀧尾神社

琵琶湖疎水に架かる朱塗りの橋を渡ると現れる山科区の本圀寺(ほんこくじ)は、龍のパワースポットとしても有名だ。本師堂そばに、商売繁盛に絶大なご利益をもたらすといわれる「九頭龍銭洗弁財天」を祭る。大きな石灯籠に巻きついた金色(こんじき)の龍の口からは、とうとうと霊水が注がれる。ご神体から流れ出る霊水で、欲望や執念の元となる穢れた銭を洗い、悪運を呼び込む執着を洗い清めることにより、財運のご利益を叶えてくれるという。

霊水で洗ったお金を浄財袋に入れて持ち帰ると、財運を授けてくれるという本圀寺の九頭龍銭洗弁財天

今年は辰年。龍にゆかりの神社仏閣を巡って、龍神様のご利益を授かってみてはいかがだろう。

制作著作:KBS京都 / BS11

【放送時間】
京都浪漫 悠久の物語
「辰年は龍を見に行こう~妙心寺・泉涌寺・瀧尾神社・本圀寺~」
2024年1月22日(月) よる8時~8時53分
BS11(イレブン)にて放送

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