ここからしか見えない京都
  

厳しく、優しく、美しい仏様たち

時代ごとに異なる仏像の表情

京都市には1500軒以上もの寺院があり、さまざまな仏様が安置されています。今回は常盤貴子さんが女性京仏師・松久佳遊(まつひさかゆう)さんと共に、美しい仏像に出会い、仏師の仕事に触れる旅に出ます。

最初に訪れたのは、古くから皇室と関係の深い泉涌寺(せんにゅうじ)。真言宗泉涌寺派の総本山で、境内には塔頭があり、それぞれの仏像によって時代ごとの特徴を知ることができます。即成院(そくじょういん)には、本尊・阿弥陀如来坐像とその左右に二十五菩薩像(共に重要文化財)が並び、「現世の極楽浄土」と呼ばれる世界が広がります。二十五菩薩像を見ると、まるでオーケストラのようにそれぞれ手に楽器を携えています。これは臨終の際に人々を迎えに来て、極楽浄土へ導いてくれるという経典に基づいたもの。阿弥陀如来坐像は平安時代の作で、丸みがあり柔らかく、優しい表現が特徴的の「定朝様(じょうちょうよう)」という様式です。

即成院の本尊・阿弥陀如来坐像と二十五菩薩像。二十五菩薩の楽器を奏でる姿を見ていると、不思議と幸せな気持ちに ©KBS京都/TOKYO MX/BS11

そして同じ塔頭の戒光寺(かいこうじ)は、鎌倉時代の仏師・運慶(うんけい)、湛慶(たんけい)親子の合作による釈迦如来立像が。身の丈はおよそ5.4メートル、台座から光背の先端まではおよそ10メートルあり、木造の釈迦如来としては世界一の大きさといわれています。衣の部分は、細く切った金箔を張り付けていく「截金(きりかね)」という伝統技法が用いられているのだとか。現在、その技術を受け継ぐ第一人者が松久さんの姉、真やさんです。佳遊さんと共に、松久宗琳佛所(まつひさそうりんぶっしょ)で仏像造りの技術を守り続けています。

間近で見ると大迫力の戒光寺の本尊・釈迦如来立像(しゃかにょらいりゅうぞう)。寺の仏典によると、お釈迦さまの身長が一丈六尺=約4.8メートルあったとされ、その大きさに作られた仏像を「丈六仏」というのだとか ©KBS京都/TOKYO MX/BS11
父の宗琳さんのもとで仕事をしていた截金師から手ほどきを受けて、歴史上初めての女性截金師となった真やさん。 ©KBS京都/TOKYO MX/BS11

門前の美味と国宝の観音菩薩に感動

豊臣秀吉が奈良の東大寺にならって、東山の大和大路に大仏を安置する方広寺を建立しました。ところが落雷などで大仏は焼失、再建しては焼失を繰り返し、現在、往時を物語るのは鐘楼や諸将の名が刻まれた石塁、石塔だけとなりました。

その門前に400年の老舗料亭として知られる「わらじや」があります。方広寺の建設中にしばしばその様子を見に訪れた秀吉は、当時「紀ノ国屋」という茶屋であったこの店で、草鞋を脱いで休憩したことから店名が「わらじや」に。古式ゆかしい店のしつらえは、まさに“市中の山居”という雰囲気です。店の名物は「うなべ」と「うぞふすい」。うなべは、昆布とカツオのダシで、筒切りにして焼いたウナギを煮て味わいます。うぞふすいは、鍋の中に白焼きにしたウナギと卵に自家製の餅、それにシイタケ、ゴボウ、三つ葉などを合わせた香り豊かな一品です。

旅人の疲れを癒し、精をつけてもらおうと考案した「うなべ」と「うぞふすい」。滋味あふれ、一口食べるごとに力がみなぎって来るようだ ©KBS京都/TOKYO MX/BS11

そして最後に訪れたのは西京区大原野にある願徳寺です。およそ1300年前、持統天皇の発願によって創建された古刹で、平安時代の傑作といわれる観音菩薩を祀っています。如意輪観世音菩薩半跏像(にょいりんかんぜおんぼさつはんかぞう)(国宝)、平安時代前期に作られたカヤの一木造。作者は不明ですが、その作風から中国からの渡来仏、あるいは渡来人による作との説があります。凛とした表情に知性的な眼差し、滑らかな体の線、体を包む布の柔らかさなど、木を彫ったとは思えないほど繊細そのもの。佳遊さんも仏師としての心構えをもう一度、胸に焼き付けた旅となったようです。

見目麗しい願徳寺の観世音菩薩。その美しさは仏像ファンだけでなく、多くの参拝者の心を揺さぶる ©KBS京都/TOKYO MX/BS11

【次回放送情報】
■京都画報 第21回「心を癒やす仏像めぐり -仏師と訪ねる京の旅-」
BS11にて6月14日(水)よる8時00分~8時54分放送

※ 放送後、BS11+にて6月14日(水)よる9時~ 2週間限定で見逃し配信いたします。

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