ここからしか見えない京都
  
京都の人々を支えてきた水の恵み、鴨川。能や歌舞伎の誕生にも影響を与えたといわれる

鴨川沿いの名刹を歩く

京都市内を南北に流れる鴨川は、平安京の昔からさまざまな文化を育んできた。一方で幾度となく氾濫を起こしてきたことから、“暴れ川”の異名を持つ。下流から上流をたどると、京都の人々と鴨川の共生の歴史が垣間見えてくる。

四条大橋近くに建つ仲源寺は、鎌倉時代の鴨川の氾濫の際、本尊に雨が止むよう祈願し、その霊験から雨止(あめやみ)地蔵と呼ばれるようになった。その後、「あめやみ」が転訛して「めやみ」となり、眼病にご利益がある目疾(めやみ)地蔵とされ、江戸時代には名地蔵の一つに数えられた。ちなみに地蔵尊の右目には、涙が流れたような跡があり、眼病に悩む人の身代わりになったという言い伝えから、目疾地蔵と命名されたという説も残る。

仲源寺の地蔵尊。目元には涙の跡のようなものが光って見える

三条大橋の東側には「だんのうさん」こと、檀王法林寺(だんのうほうりんじ)がある。年に一度、毎年6月の第1土曜日に行われる「龍神法要」の日に御開帳される加茂川龍神像は、水害や日照りから京都を護ってきたという秘仏だ。そして、本堂の小さな厨子にはもう一つの秘仏・主夜神像(しゅやじんぞう)が祀られている。御開帳されるのは毎年12月の第1土曜日の法要「招福猫・主夜神大祭」のみで、盗難除け、火災除けの神として崇められている。ちなみに主夜神の使いは黒猫で、右手を挙げた招き黒猫が祀られていることから、大祭の日には全国から猫好きが参拝し、各地の招き猫を奉納する人が後を絶たない。

檀王法林寺の加茂川龍神像は晴雨を司り、日照りや水難から守ってくれるという

鴨川の源流域、雲ケ畑にあるのが志明院(しみょういん)だ。650年(白雉元年)に修験道の開祖・役行者(えんのぎょうじゃ)が草創、829年(天長6年)淳和天皇の勅願により空海が再興した。山岳信仰の霊場であるため、険しい山内に諸堂が点在する。奥の院の隣にある岩屋には信仰上の“鴨川の最初の一滴”とされる霊水が湧出し、その昔、水神を祀って鴨川の清浄な用水を祈願したという。新聞記者時代の司馬遼太郎がこの寺に宿泊した際に、体験した不思議なできごとを後年、宮崎駿監督に話したことがアニメ映画「もののけ姫」の着想につながったといわれる。

信仰上の“鴨川の最初の一滴”が湧出するといわれる志明院の岩屋「神降窟(しんこうくつ)」

制作著作:KBS京都 / BS11

【放送時間】
京都浪漫 悠久の物語
「鴨川歴史探訪~仲源寺・檀王法林寺・志明院~」
2023年6月12日(月) よる8時~8時53分
BS11(イレブン)にて放送

この記事を書いた人
旅行読売出版社 メディアプロモーション部
 
月刊「旅行読売」は1966年創刊の、日本で一番歴史がある旅行雑誌です。国内外に地域の魅力を発信して、交流人口を増やすことで、地域の発展に貢献することを目指しています。毎月28日発売。  
 

タグ一覧

#人気ワード