ここからしか見えない京都
  

丁寧な手仕事が生み出す生活道具

ふだん使いから見い出す“用の美”

清水寺の参道である五条坂界隈は京都を代表する焼き物、清水焼の発祥の地。大正から昭和にかけて活躍した陶芸家・河井寛次郎はこの地で窯を持ち、数多くの作品を制作してきました。陶磁器店が建ち並ぶ五条通の少し南、寛次郎の仕事場でもあり、住まいでもあった「河井寛次郎記念館」が閑静な住宅街にたたずんでいます。館内には陶器や木彫などの作品はもちろん、寛次郎愛用の調度品や家具がそのままに。「仕事が暮らし、暮らしが仕事」と唱え、日用のものに美を見出した寛次郎の世界をかいま見ることができます。

寛次郎の住まいをそのまま使った「河井寛次郎記念館」。調度品や家具からも、落ち着いた暮らしぶりが目に浮かぶ ©KBS京都/TOKYO MX/BS11

職人たちの手仕事によって生み出された生活道具に、機能性と飾らない美しさを見出した「用の美」は、いまもなおこの地に根付いています。三条大橋そばには常盤貴子さんが大好きと公言する生活道具の店があります。「桔梗利 内藤商店」は江戸時代後期の創業。店先には棕櫚(しゅろ)で作られた箒(ほうき)、たわし、刷毛(はけ)のほかに、竹や藁で作られた製品が並びます。この店で扱う製品は、すべて自然素材と職人の手仕事によるもの。掃除や台所仕事など、ともすれば面倒な時間を心豊かにしてくれる道具が揃います。

「桔梗利 内藤商店」。電化製品ばかりの現代だからこそ、デザインに無駄のない、自然素材の生活道具に心惹かれる ©KBS京都/TOKYO MX/BS11
のれんや看板もないが、店の顔である7代目の内藤幸子さんが看板代わり。庭はきに使用する箒は、最近では夜しか掃除できない人が、畳やフローリングの掃除に使う人が多いという ©KBS京都/TOKYO MX/BS11

一つひとつのこだわりが快適な日常へ

三十三間堂のすぐ近く、料理人や料理好きが絶賛するアイテムが店内せましと並ぶ「鍛金(たんきん)工房WESTSIDE33(サーティースリー)」があります。鍛金はその名の通り、金属をたたくことによって強度を増す技法。素材は大きく銅とアルミ、真鍮(しんちゅう)の3つ。アルミは軽くて手入れがしやすい。銅は金属の中でも熱伝導率が高く、食材の火の通りが早い。真鍮は強度が高いなど、それぞれに特徴があります。鍛金で作った鍋はまんべんなく熱を通すので煮込み料理には最適なのだとか。壊れても修理できるサステナブルな点も魅力です。

「鍛金工房 WESTSIDE33」の工房で作業する職人。調理器具や生活用具、また大きさによってもたたき方が変わるので、機械ではできないのだとか ©KBS京都/TOKYO MX/BS11

右京区にある箸の専門店「京都おはし工房」は、その人に合ったオーダーメイドの箸を作る工房です。世界中から集めた貴重な天然素材を厳選、一膳一膳すべて手作りで削り上げていきます。シャープな箸先は、細かい食材も簡単につまみ取ることができ、また唇に触れにくいので、食事がより楽しく味わえるのだとか。たかが箸、されど箸。いつも使うものだからこそ、少しこだわった道具を使いたいものです。

「京都おはし工房」の箸は、先がシャープなのが最大の特徴。こんな小さなゴマさえもつかめてしまうほど、繊細に削り上げている ©KBS京都/TOKYO MX/BS11

「鍛金工房 WESTSIDE33」の調理器具を使うのは日本料理の「じき宮ざわ」。ミシュランガイド京都・大阪の発表以来、ずっと星を取り続ける人気店です。美味しい料理を提供するために、良い道具を使う。このこだわりが食べる人の心をしっかりつかんでいるのかもしれません。

ハモや粟麩、とりつくね、野菜など、13種類の食材を入れてじっくり煮込んだ「じき宮澤」の薬膳鍋。深い味わいはもちろん、体がじわっとあたたまる。鍋は「鍛金工房 WESTSIDE33」の製品 ©KBS京都/TOKYO MX/BS11

【次回放送情報】
■京都画報 第24回「京都・美の生活遺産 - 日常に宿る用の美 -」
BS11にて9月13日(水)よる8時00分~8時54分放送
出演:常盤貴子

※ 放送後、BS11+にて9月13日(火)よる9時~ 2週間限定で見逃し配信いたします。

この記事を書いた人
旅行読売出版社 メディアプロモーション部
 
月刊「旅行読売」は1966年創刊の、日本で一番歴史がある旅行雑誌です。国内外に地域の魅力を発信して、交流人口を増やすことで、地域の発展に貢献することを目指しています。毎月28日発売。  
 

タグ一覧

#人気ワード