ここからしか見えない京都
  

“大文字”を登る、学ぶ、眺める

祇園祭とともに京都の夏の風物詩として全国的に有名な“五山送り火”。5つの山で送り火が点火されますが、もっとも有名なのが「大文字」と言えるでしょう。
大文字が灯されるのは、如意ヶ嶽の支峰で、銀閣寺の裏にそびえる大文字山。お手軽に山登りができることもあり、京都市民憩いの山としても人気です。他の四山は、送り火の点灯がされる火床まで行くことができませんが、大文字山は立ち入ることが可能(8月16日の送り火当日は入山できません)。火床からの眺めとともに、おすすめの大文字鑑賞スポットをお届けします。

八神社の鳥居手前の道を右へ進むと登山口に至ります

大文字山への登山ルートは多数ありますが、もっとも一般的なものは銀閣寺の北側にある八神社前から上るルート。京都駅や市街地からは銀閣寺行きの市バスで容易にアクセスが可能です。
入山後はひと息つけそうな場所こそありますが、売店や自動販売機はないので、飲料水などは麓で買いそろえておきましょう。ハイキングを兼ねて訪れる地元の方も多いようですが、登山口近くで購入できる、とっておきのお弁当をご紹介します。

お弁当は今年の8月に内容がリニューアル!

銀閣寺へと続く参道手前にある信号を南に1分ほど進むとあるのが、京都で有名なうどん屋「おめん 銀閣寺本店」。登山口までは10分ほどの場所です。こちらで購入することができるのが、その名も“大文字登山弁当”(税込900円・2日前までに要予約)。
中身は、おむすび2つと京都静原産の卵を使った玉子焼き、そして大山地鶏の唐揚げときんぴらごぼう。曲げわっぱの容器も良い味を出しています。お弁当の売上げの一部は大文字山の環境保全、そして送り火の事業資金として寄付されるそう。大文字山、そして送り火を後世に伝えるために、微力ながらも支援に繋がるお弁当なのです。程よいサイズ感で、持ち運びやすいのも嬉しいポイントです。

案内板が設置されるなど、火床までの道は比較的整備されています

八神社前の登山口から、大文字の火床までは30分~1時間ほどの山行となります。舗装された道や階段などもあり、登山としては、「入門編」と言えそうですが、少し滑りやすい坂なども数ヵ所あるので、歩きやすい靴と服装をおすすめします。また当日晴れていても前日などが雨の場合はぬかるむ場所もあるので、とりわけ初心者の方は、登山決行日は慎重に選びましょう。

自然豊かな大文字火床までの道中。初夏は新緑、秋は紅葉が美しい。

いよいよ大文字の火床へ。このあたりで標高は330メートル。この日は、登山口から40分ほどで登ることができました。目の前に広がるのは京都市街地の絶景。眼下には、京都御苑、賀茂川、織田信長を祀る建勲神社(たけいさおじんじゃ・けんくんじんじゃ)が佇む船岡山など、名だたる“大文字鑑賞スポット”に加え、空が澄んでいれば大阪のビル群まで見渡すことができます。

「大文字」の火床から、「妙・法」「船形」「左大文字」「鳥居形」が眺められます

北側へ目を移すと、東から「妙・法」「船形」「左大文字」の点火場所も確認することができます。なんと、よく目をこらすと嵯峨野の曼荼羅山にある「鳥居形」の姿も! 8月16日の五山送り火は、よる8時の大文字山の点火を皮切りにスタート。そこから5分おきに「妙・法」「船形」「左大文字」、そして「鳥居形」へと、西に向かって順番に点灯が続きます。各山での点火時間はおよそ30分となるので、五山送り火はよる9時頃に終了することとなります。

写真は「大」の第一画目の一部分

大文字の火床に目を戻しましょう。間近で眺めて驚かされるのは、何と言ってもその大きさ。大の第一画は約80メートル、第二画は160メートル、そして第三画は120メートルに及び、計75基の火床で夜空に浮かぶ「大文字」を作り上げます。全ての火床に1.3メートルの高さに点火用の松割木(薪)を組み上げるそうで、大変大がかりなもの。昨年(2022年)は、送り火の開始直前に豪雨に見舞われたこともあり、点火にやや時間を要することとなりましたが、大文字は、遠く嵐山の渡月橋付近からも確認することができました。

火床の一角にあるこちらの祠は、弘法大師空海を祀るもの。いまや京都はもとより、日本の夏を代表する光景としても有名な大文字の送り火ですが、意外にもその発祥ははっきりとしないと言います。平安時代に弘法大師空海が始めたとする説や、室町時代に銀閣寺の前身である山荘を築いた足利義政が始めたとする説、はたまた江戸時代にまでその起源が下がるという説も。空海に関して言えば、一説に「大文字」の大の字を形どった人物であるという伝承も残ります。
さて、京都市街地を隈無く見下ろすかのような大文字ですが、おすすめの鑑賞スポットをお届けしましょう。

北大路橋の南に架かる出雲路橋付近からの大文字

先述した京都御苑や船岡山にくわえ、大文字山の西側の吉田山は人気の鑑賞スポットですが、木々などに遮られること無く大文字を綺麗に眺められる場所は限られてしまい、特等席の“競争倍率”はかなりのもの。
賀茂川もまた人気の鑑賞スポットで、特に賀茂川と高野川が合流する出町柳(でまちやなぎ)付近は大勢の見物客で賑わいます。おすすめは二川の合流点から、鴨川の右岸を北へ向かったエリア。大文字の火床はやや北を向いているため、北であれば北大路橋付近までは美しい筆致の「大」の字を見ることができます。

実は出町柳から北大路橋付近までの鴨川右岸からの大文字の眺めは、京都市の眺望景観創生条例により保全されており、大文字を遮る高層建築が少なく見通しが保たれているのです。そのうえ河川敷も広く、点火直前に訪れても混雑をあまり感じることなく、大文字を眺めることができます。この一帯からの眺望が条例で守られていることは、未来に継承すべき、うってつけの鑑賞スポットであるという裏付けと言えるかもしれません。

なお、お盆は京都ではなく、実家やお住まいの都道府県で過ごされるという方も多いことでしょう。テレビ中継なら、五山に点火される送り火が、順々に古都の夜空を赤く染めゆく光景に加え、大文字山からは、緊張に包まれる点火前の模様から壮大に燃え上がる大迫力の現場映像も見ることができるでしょう。舞台裏を垣間見ることができるまたとない機会です。

【放送時間】
生中継!京都五山送り火2023
2023年8月16日(水)よる7時00分~8時53分
BS11(イレブン)にて放送

制作著作:KBS京都 / BS11

この記事を書いた人
京都の特等席 編集部

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