ここからしか見えない京都
  

読んで楽しむ 感性を刺激され、先端の美意識も香る「紫竹」エリア

これまでご紹介してきたスポットをエリア別にピックアップし、「読んで」京都の旅を楽しんでいただく「空想京都さんぽ」シリーズ。旅行やお出かけが制限される今、昨年に続き再び、空想の京都さんぽにお連れします。第11回は大徳寺の北、北山通りの南北に広がる北区の紫竹(しちく)エリア。閑静な住宅街ながら、店主の美意識が宿る個人店が点在し、注目されているエリアです。

■暮らすように、小さな旅にでかけるように、自然体の京都を楽しむ。朝日新聞デジタルマガジン&Travelの連載「京都ゆるり休日さんぽ」はそんな気持ちで、毎週金曜日に京都の素敵なスポットをご案内しています。 (文:大橋知沙/写真:津久井珠美)

※新型コロナウイルスの感染拡大防止のため、営業状況が変更されている場合があります。ご注意ください。

心地よい暮らしに寄り添う、無垢の木の家具と定番品

スリムな造形と柔らかな輪郭のダイニングテーブル「Sharpie」は、触り心地の良さも魅力。サイズなど相談可能

無垢(むく)の木の表情をいかし、機能的ながらシンプルで温かみの宿る家具を作る「木印」。上賀茂神社の境外摂社で、京都市指定史跡でもある久我神社の向かいに立つ、モダンな鉄格子の外観が目印です。「シェーカー家具のように、簡素で機能性を重視した作りがうちの家具の特徴です」と話すのは、店主の溝上良子さん。常連客から「大将」と慕われる家具職人の夫・吉郎さんのものづくりを伝えながら、スタンダードで使い勝手のよい日用品も提案しています。

店主の溝上良子さん。不定期で、服やアクセサリー、うつわなどの展示も開催している

引っ越しや家族構成の変化を機に家具を相談しに訪れる人の中には、京都で活躍するクリエーターや店主の姿も。ともに年を重ね、味わいを増していく家具と、「いつでも買い足せるように」という暮らし目線で選ばれた品々のそろうこの店は、京都の人々にとって頼れるライフスタイルショップです。

木印
https://www.kijirushi.net/
■紹介記事はこちら
https://www.asahi.com/and_travel/20200306/221606/

物語を味わうように、美しいものに共鳴する体験

入ってすぐ、美しい藍色の壁が目をひく空間。物販のみの利用は予約なしで立ち寄りできる

築90年ほどの長屋町家を改装した空間に、自然の気配や時の流れ、手仕事の跡を感じる品々が並ぶギャラリー&カフェ「STARDUST」。オープンから6年目を迎え、今では紫竹のカルチャーを象徴するような場所です。店主の清水香那さんが作り手のスピリットに共感した服やうつわ、ジュエリーは、見つめるほどに心に響き、それを美しいと思う自分自身の中にも、同じ光が宿っていると伝えてくれるものばかり。詩や物語を読み終えたような、充足感と余韻に満たされます。

STARDUSTオリジナルのハーブティー(770円)と、季節に合わせた香りやフルーツをカシューナッツやココナツオイルなどで仕上げる「ロウケーキ」(825円)。いずれも税込み

現在、完全予約制で営業するカフェでは、香りの高さで知られるフランス・リヨン「CHA YUAN(チャ ユアン)」のフレーバーティーや、オリジナルブレンドのハーブティーなど、植物の恵みと香りの魔法を体験できるお茶が充実。加熱せず、素材の風味をそのままにいただくロウケーキなどのデザートとともに、心うるおう時間を過ごすことができます。

STARDUST
http://stardustkyoto.com/
■紹介記事はこちら
https://www.asahi.com/and_travel/20200710/265210/

うつろう季節を尊び、慈しむ。山野草の景色に出会う

素朴なたたずまいが心に響く、フキタンポポの鉢植え

「STARDUST」の隣にある花屋「みたて」もぜひ訪れたい店の一つ。今この季節に野山で咲いている草花をしつらえる花屋では、うつろう季節の美しさとはかなさ、かけがえのなさに気付かされます。

枝物や切り花を1本から購入することも可能。写真は店舗改装前の空間

季節や暦に合わせた山野草のギフト、切り花や鉢植え、花器などを、テーマに合わせて展示販売。自然の営みに心を寄せ、しきたりや風習を新たな文脈でとらえなおす「みたて」の感性を、暮らしのなかに迎えいれてみてください。

みたて
https://www.hanaya-mitate.com/
■紹介記事はこちら(写真は店舗改装前)
https://www.asahi.com/and_travel/20190301/26407/

できたての素朴な和菓子を手土産に

色とりどりのおはぎや、「猫もなか」(1個250円)、「季節のお団子」(1本240円)など。すべて税込み

「みたて」から東へてくてく歩いた先にたたずむ「おやつaoi」で、素朴な和菓子を手土産に買って帰りましょう。店主の土田葵さんが、「子どものころおばあちゃんが作ってくれたおはぎのような素朴な和菓子を届けたい」と作る、週末だけのおやつの店です。

オープンは基本的に金・土曜のみ(3月からは木曜も営業予定)。完売次第閉店なので、予約やお取り置きをしておくのがおすすめ

おはぎ、もなか、お団子など、土田さんが作る和菓子の多くは、朝作ってその日のうちに食べる「朝生菓子」。日持ちはあまりしませんが、作りたてのおいしさや昔ながらの家庭のおやつを、しみじみ味わえるのは朝生菓子ならでは。自家製のあんこや季節の果物を取り入れた味など、知恵と手間をかけた和菓子にほっと心が和みます。

おやつaoi
https://www.instagram.com/oyatsu.aoi/?hl=ja
■紹介記事はこちら
https://www.asahi.com/and_travel/20190920/143930/


観光名所は少ないながらも、店主の築く世界観や、お茶、和菓子、花といった日本の美意識に魅了され、遠方や海外から訪ねて来る人も少なくない紫竹エリア。地元の常連客も多く、「ふだんの京都」を味わいながら最先端のクリエーションにふれることができる地域です。心が動くその瞬間を楽しみに、ゆっくりと散策してみてください。

この記事を書いた人
大橋知沙 編集者・ライター
 
東京でインテリア・ライフスタイル系の編集者を経て、2010年京都に移住。 京都のガイドブックやWEB、ライフスタイル誌などを中心に取材・執筆を手がける。 本WEBの連載「京都ゆるり休日さんぽ」をまとめた著書に『京都のいいとこ。』(朝日新聞出版)。編集・執筆に参加した本に『京都手みやげと贈り物カタログ』(朝日新聞出版)、『活版印刷の本』(グラフィック社)、『LETTERS』(手紙社)など。自身も築約80年の古い家で、職人や作家のつくるモノとの暮らしを実践中。  
この記事の写真を撮影した人
津久井珠美 写真家
 
大学卒業後、1年間映写技師として働き、写真を本格的に始める。 2000~2002年、写真家・平間至氏に師事。京都に戻り、雑誌、書籍、広告など、多岐にわたり撮影に携わる。  

朝日新聞デジタルマガジン&Travelより転載
(掲載日:2021年2月12日)