ここからしか見えない京都
  

春、フレッシュで軽やか台湾コーヒー「Goodman Roaster Kyoto」

京都に桜の季節が訪れました。散歩が心地よい季節、コーヒーブレークに最適な一軒から、京都歩きを再開します。今回訪ねた「Goodman Roaster Kyoto」は、ちょっとユニークな飲み方でスペシャルティーコーヒーをいただけるカフェ。すっきりとしてフレッシュな浅煎りのコーヒーは、春の陽気にぴったりの一杯です。

■暮らすように、小さな旅にでかけるように、自然体の京都を楽しむ。朝日新聞デジタルマガジン&Travelの連載「京都ゆるり休日さんぽ」はそんな気持ちで、毎週金曜日に京都の素敵なスポットをご案内しています。 (文:大橋知沙/写真:津久井珠美)

浅煎りのおいしさに開眼する、台湾・阿里山コーヒー

1人分ずつ茶器にドリップされる阿里山コーヒー。すっきりとした後味でフルーティーな酸味が心地よい

お茶と見まごうほど澄んだ、琥珀(こはく)色の液体。中国茶器でサーブされるこの清らかなドリンクが、「Goodman Roaster」自慢の阿里山コーヒーです。お茶の産地として知られる台湾・阿里山は、他方で「幻のコーヒー」と呼ばれる希少なコーヒー豆が栽培される地域。昼夜の強い寒暖差と標高1000m以上の高地は、果実のようにフルーティーでふくよかな甘みを秘めたコーヒー豆を育みます。

オーナーの伊藤篤臣さん。2008年に渡った台湾で阿里山コーヒーの魅力を知り、さらなるおいしさを追求して徹底した品質管理に取り組んだ

そんな阿里山コーヒーの特色にいち早く注目し、現地の農園と3年かけて品質改良に取り組んだのが「Goodman Roaster」のオーナー・伊藤篤臣さん。日本に先駆けオープンした台北の2店舗で、台湾の人々に自国のコーヒーのおいしさを伝え、2019年秋、京都に日本初となる3号店をオープンしました。

焙煎(ばいせん)は台北・京都ともにオンラインで一定の品質に管理している
阿里山コーヒー以外にシングルオリジンの豆も取り扱う。どれも「Goodman Roaster」得意のライトローストで軽快な風味に仕上げている

「ライトロースト(浅煎り)の阿里山コーヒーは、上質な肉と同じ。生豆の品質が良いから、火を通す(焙煎)のは最小限でいいんです。『浅煎りの酸味が苦手』という人もいますが、おいしい酸味のコーヒーを飲んだら印象が一変すると思います。すっきりして甘みが豊かでしょう? お茶みたいにするする飲めるんです」

茶器で飲むコーヒーで台湾文化を感じて

ガラス張りの窓から注ぐ自然光が心地よい店内

コーヒーを茶器で提供するのは、「お茶のように飲める」阿里山コーヒーのすがすがしい風味と軽やかな後味を感じてほしいから。伊藤さんが「Goodman Roaster」を立ち上げる前、訪れた台湾で出会った光景もヒントになっていると話します。

「友人同士、8人くらいで円卓を囲んで、茶器でコーヒーを飲んでいる様子を目にしたんです。台湾の人は本当にお茶をよく飲むのですが、コーヒーもこんなふうに、みんなの輪の中にあるといいなぁと思って」

「台湾阿里山コーヒー」(焼き菓子、阿里山高山茶付き1600円・税込み〜)

コーヒーとお茶。対照的でありつつ共通点も多い、二つの台湾の味を堪能できるようにと、セットには中国茶も付いています。指先でつまめるほどの小さな茶壺に入っているのは、コーヒーと同じく阿里山で栽培された高山茶葉。コーヒーを飲む前にまず茶葉の香りを嗅ぎ、嗅覚(きゅうかく)をリセットしてからコーヒーを味わってほしいという計らいです。

窓に描かれたグラフは焙煎に関わる様々な数値を表す。自転車スタンドがありサイクリングがてら立ち寄る人も

コーヒーを1杯ずつ自分で茶杯に注ぎ、阿里山の豆の風味を堪能したら、最後は茶葉に湯を注いで台湾茶で締めくくり。甘く爽やかなコーヒーの余韻に、華やかな台湾茶の香りが重なり、調和します。

「コーヒーの世界ではまだ珍しい台湾のコーヒーですが、通常の飲み方とは違う体験を通じて、台湾の文化を感じてもらえたら」

そう語る伊藤さん。一連の体験は、私たちのよく知るコーヒーとは違う、異国の初めての飲み物を楽しむかのような時間をもたらします。

店から徒歩2、3分、京都市立下京中学校成徳学舎の校舎に沿って植えられた「春めき」という品種の桜。染井吉野よりひと足早く開花し、道ゆく人の目を楽しませる
エスプレッソドリンクはテイクアウト可能。「ラテ」(500円・税込み)など

「Goodman Roaster Kyoto」にほど近い、現在は使われていない下京中学校成徳学舎は、早咲きの桜「春めき」の名所。アーチ型の窓と桜のノスタルジックな風景を眺めた後に、コーヒーとお茶が導く台湾への「旅」を体験するもよし、テイクアウトして歩きながら桜をめでるもよし。春の寄り道に、初めてのコーヒーとの出会いもぜひ、楽しんでみてください。

3月中旬に見頃を迎えた。散りゆく風景も楽しみたい
この記事を書いた人
大橋知沙 編集者・ライター
 
東京でインテリア・ライフスタイル系の編集者を経て、2010年京都に移住。 京都のガイドブックやWEB、ライフスタイル誌などを中心に取材・執筆を手がける。 本WEBの連載「京都ゆるり休日さんぽ」をまとめた著書に『京都のいいとこ。』(朝日新聞出版)。編集・執筆に参加した本に『京都手みやげと贈り物カタログ』(朝日新聞出版)、『活版印刷の本』(グラフィック社)、『LETTERS』(手紙社)など。自身も築約80年の古い家で、職人や作家のつくるモノとの暮らしを実践中。  
この記事の写真を撮影した人
津久井珠美 写真家
 
大学卒業後、1年間映写技師として働き、写真を本格的に始める。 2000~2002年、写真家・平間至氏に師事。京都に戻り、雑誌、書籍、広告など、多岐にわたり撮影に携わる。  

朝日新聞デジタルマガジン&Travelより転載
(掲載日:2021年3月26日)

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