ここからしか見えない京都
  

十七回目「創作とカフェ②」

朝晩の冷え込みが日一日と深まる今日この頃、いよいよ冬もすぐそこまでやってきましたね。
私はというと、早くも年の瀬の忙しさが始まっておりまして、目をグルグルさせながら来年に向けての仕事に取り組んでいます。
いやはや、もの書きにとって忙しいというのは、ありがたいこと。
温かい飲み物を傍らに、がんばろうと思っています。
さてさて、今回も先月に引き続き、『創作とカフェ』。
今月のテーマは、『現実を忘れさせてくれるカフェ』です。

[2]ライト商會

前回、紹介させていただいた『吉田山荘・真古館』は、作中にも登場するしたカフェですが、『ライト商會』は、拙著『京都寺町三条のホームズ』(以下・京都ホームズと略)に登場する骨董品店『蔵』のモデルとなったカフェです。
所在は、まさに京都寺町三条で、寺町通りと新京極通りをつなぐ小路にあります。
作中の骨董品店『蔵』とは違い、『ライト商會』は骨董品店でありながら、カフェでもあるんです。
店内には、レトロな照明・家具・食器・人形・ガラス製品等、古今東西様々な骨董品が展示されており、訪れた客はそれらを眺めながら、飲食を楽しむことができます。

※展示されているのは商品なので、購入もできます。

和洋折衷でレトロモダンな雰囲気はある意味、京都らしいお店なのではないかと思うのです。
この店を訪れると独特の世界観にどっぷり浸ることができ、新たな創作のアイデアがむくむくと湧いてくるという、私にとって非常にありがたいお店です。
(いつもありがとうございます!)

[3]カカオマーケット『ANGEL LIBRARY』

こちらも、京都ホームズ(4巻)に登場したお店で、非常に反響がありました。

©秋月壱葉(コミック版京都ホームズ8巻より)

まるで英国の絵本から飛び出してきたような外観。
店の前には、異国情緒のある街灯にベンチ、店のすぐ脇には白川が流れています。
店内に入ると、チョコレートの香りとともに、天井まで届く巨大なディスペンサーが目に入ります。そう、ここはチョコレートショップ。
甘い香りも相俟って、足を踏み入れた瞬間から幸せな気持ちになります。

カフェ『ANGEL LIBRARY』は、ショップの地下にあります。
店に入るまでの仕掛けも、わくわくします。
ショップのスタッフさんに秘密のナンバーをもらい、カフェの扉にそのナンバーを入力して、中に入るのです。この一連の作業、コロナの関係でやめてしまったという噂を耳にしました。この記事が掲載される頃はどうなのか分かりませんが、私としては秘密のナンバーを入力して扉を開けるという作業が大好きだったので、また落ち着いたら再開していただきたいなと思っています。

『ANGEL LIBRARY』の店内はほの暗く、落ち着いた雰囲気です。壁には洋書が並んだ本棚が埋め込まれていまして、外国の図書館を彷彿とさせるのですが、とてもファンタジックでもあり、まるで別世界に紛れ込んだかのようです。
徹底して作り込まれた、『日常とかけ離れた空間』は、まるで某ネズミのテーマパークを思い出させました。
素敵な空間に身を置いて、うっとりしながら口にするコーヒーとガトーショコラは格別です。
夢の世界に身を置いて、大きな刺激を受けた私は、いそいそとノートを開き、創作活動に勤しむのでした。

前回の記事で、カフェでは主にプロット(作品のあらすじ)作りをしてします、と書いたところ、読者さんから「どうやって、プロットを作るのですか?」という質問を受けました。その方にはお答えしたのですが、せっかくですので、この場でも回答させていただきますね。
創作の初期段階、私の頭の中にはアイデアは感じで浮かんでいるのですが、それは雲のようにふわふわしていて、どんな物語なのかハッキリしていないんです。
とりあえず、そのふわふわと浮かんでいる不確かなものをなんとかワードにして、ノートに箇条書きにしていきます。
たとえば、『京都ホームズ』なら、『京都』『探偵』『骨董品店』『人の死なない事件』といった感じです。
ちなみに『わが家は祇園の拝み屋さん』を書く前の創作ノートを確認すると、『怪異』『お祓い』『あまり怖くない』『ほっこり』等と書いていました笑
それらのワードをつなぎ合わせて、物語として組み立てていきます。
こうした作業は、家よりもカフェでする方が捗るのですが、それはきっと素敵な空間と限られた時間、適度な雑音が私に特別な集中力を授けてくれるのかもしれませんね。

さてさて、創作とカフェ、次回が最終回です。
来月は、私がずっと気になっていたカフェに行ってきたレポートをお届けしたいと思います。
よろしくお願いいたします。

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ぜひよろしくお願いいたします。

この記事を書いた人
望月麻衣
 
京都在住の道産子。もの書き。 『京都寺町三条のホームズ』(双葉社)『わが家は祇園(まち)の拝み屋さん』(KADOKAWA)『京洛の森のアリス』(文藝春秋)『太秦荘ダイアリー』(双葉社)など書籍発売中。  
 

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