ここからしか見えない京都
  

二十九回目「『文学フリマ京都』のススメ」

気がつくと、1月ももう終わりですね。
年明けムードも随分薄れましたが、2024年最初のエッセイということで、ご挨拶させてください。『京都の特等席』読者の皆様、今年もどうぞよろしくお願いいたします。

今年はじめての話題は、文学にまつわるお話をさせていただきたいと思います。
というのも、私の今年初のイベントは、『文学フリマ京都』への出店でした。

さて、この『文学フリマ』がどういうものかといいますと、コミケの文学版。
プロ・アマチュア、営利・非営利、年齢・性別を問わず、作り手が「自らが『文学』と信じるもの」を自らの手で作品を販売する、文学作品展示即売会です。
(公式サイトより)

ですので、小説・短歌・俳句・詩・評論・エッセイなど、さまざまなジャンルの文学が集まります。東京、大阪、京都、福岡、札幌、広島、岩手、香川と全国8箇所で、年合計9回開催されまして、今のところ京都では、1月中旬にみやこめっせで開催されています。

みやこめっせと聞いてもピンと来ない方もいらっしゃるでしょう。みやこめっせは京都最大級のイベント会場です。
マンガやアニメを中心としたコンテンツの総合見本市とし、『京都国際マンガ・アニメフェア』、通称『京まふ』も、ここみやこめっせで開催されています。
場所は岡崎で、京都市京セラ美術館、ロームシアター京都、平安神宮などが近くにあります。

画像素材:PIXTA

私はこの『文学フリマ』というイベントが好きでして、買い手として会場に足を運びつつ、「いつか参加してみたい」と思っていました。

そんな折、私と同じ投稿小説サイト出身の作家・藤白圭さんが、『文学フリマ』の常連参加者であることを知り、お話を伺っているうちに、
「一緒にアンソロジー本を作って、『文学フリマ京都』に出店しよう!」
と大いに盛り上がりまして、初めて参加することになりました。
それが昨年のことで、すっかり味をしめた私は今年も参加することを決めたのです。
その際にWEB作家の同期でお友達のきたみまゆさん、野々山りおさんと3人での合同誌を作ろうという話になりました。

前回はアンソロジー用の短編を寄稿しただけで、本作りには一切関わっておらず、藤白さんにおんぶにだっこの状態だったのですが、今回は自分たちで本作りをすることなったのです。

これが自分たちで作った本の裏表です イラスト:かな

この合同誌と自作のグッズを引っさげて、『文学フリマ京都』に出店しました。

ありがたいことにたくさんの人に来ていただに、お手に取っていただくことができました。
今回の『文学フリマ京都』の 来場者数は、出店者892名、来場者2751名、合計3643名と過去最高だったとのことです。

おそらく、世の中には、
「作家デビューとかは考えられないけど、自分の書いたものを本にしたい」
「即売会に興味がある」
という方が多くいらっしゃるのではと思います。
そんな方に私は『文学フリマ』をオススメいたします。

「だけど印刷所に入稿ってハードルが高い」
と、思ってらっしゃる方……はい、私がまさにそうでした。

今回、仲間と共に作業を進めることができたので、なんとか形になったのですが、一人では匙を投げていたこと間違いなしです。
ですが、そのハードルを超えた先には、とてつもない喜びがあるので、ぜひがんばっていただきたい!

ということで、今回の私たちの作業行程をシェアさせていただきますね。

◾️本作りの行程
①原稿を用意する。
②イラストレーターに表紙絵の依頼。
(私たちは好きな絵師さんに有償依頼して描いていただきましたが、写真などを使って自分で作ることもできます)
③印刷所を決める。
(今回は京都の印刷所『ちょ古っ都製本工房』さんにお願いしました)
④本のサイズを決める。
(私たちはA5サイズにしました)
⑤Wordの設定をA5サイズにし、原稿を配置。誤字脱字のチェック。
⑥表紙イラストと原稿をPDF化。
⑦入稿。

ざっくり書いていますが、これがなかなか大変でした。
印刷所に申し込む際、紙の種類を選んでいかなければならないのです。
たとえば……、

◾️本文の種類
◻︎上質紙60g
◻︎上質紙90g
◻︎ 書籍用紙72.5g(淡クリームキンマリ)
◾️表紙
◻︎上質180g
◻︎色上質最厚口
◻︎レザック175g

などなど、選択しなくてはならず、
「どう違うの?淡クリームキンマリって、レザックってなに!?」
と、いちいち混乱してしまいます。

仲間と相談した結果、私たちは今回、このように選択しました。

本のサイズ→A5
製本→くるみ製本
本文→モノクロ印刷、書籍用紙72.5g(淡クリームキンマリ)
表紙→高彩度フルカラー印刷、アートポスト紙200kg
オプション→表紙PP加工(PPマット加工)、遊び紙挿入(濃紺)

イラスト:かな

そして、本作りに悩むのが部数でしょう。
「何部刷ったらよいか分からない!」
と、悩むものです。
大量に余ってしまうのは落ち込むものですし、私からの提案は、もしお一人の参加でしたら、はじめは20〜30部くらい刷っておいて、
「もし余っても来年も出店するぞ!」
という気持ちでいると良いと思います。
(複数人でのアンソロジー集でしたら50部くらいでも良いかと)

他にショートストーリーなどを載せたフリーペーパーなども作っておくと良いのではと思います。

こうしたイベントは前提として、赤字が当たり前です。
私も今回、通販システムも利用して完売に至りましたが、利益はほとんど出ていません。

では、なぜそんなことをするのか?
それはお金では買えない楽しさがそこにあるからです。

作家デビューし、60冊以上本を刊行してきて、いつも見本誌が届くと感激しているのですが、自分が作った本が届く喜びは、また違った大きな感動があります。

『文学フリマ』はもっとたくさんの方に知っていただきたいですし、参加者も増えてほしい。特に『文学フリマ京都』は京都観光もできるので、一石二鳥ではないかと思っています。

ちなみに今年、私たちはイベント終了後、八坂神社へお詣りに行き、円山公園内の料理処で打ち上げをしました。

画像素材:PIXTA

今や文化庁を迎えた京都は、文化の町。
あらためて私、望月麻衣は『文学フリマ京都』を強くおすすめいたします。

この記事を書いた人
望月麻衣
 
京都在住の道産子。もの書き。 『京都寺町三条のホームズ』(双葉社)『わが家は祇園(まち)の拝み屋さん』(KADOKAWA)『京洛の森のアリス』(文藝春秋)『太秦荘ダイアリー』(双葉社)など書籍発売中。  
 

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