ここからしか見えない京都
  

十八回目「創作とカフェ③」

早くも年末ですね。
「ハタチをすぎると、時が経つのはアッという間だよ」
と十代の頃、親に言われたことがあります。
毎年師走を迎えるたびに、その言葉を思い出します。
歳を取るというのは、そういうことなんだな、としみじみしていたのですが、なんと、まだ高校生の娘も時間の進み方が早く感じているようです。
「体感的にはまだ10月くらい」
などと言っていました。
ちなみに私の感覚では9月くらいです笑

世の中が目まぐるしくまわっているせいか、老若問わずに早く感じるのかもしれません。
きっと、それだけせわしない毎日を送っているということでしょう。
忙しい現代人には、カフェでのんびりコーヒーを飲むといった
ゆったり贅沢に過ごす時間が必要なのではないでしょうか?

──ということで、今回のテーマも『創作とカフェ』第3弾、そして最終回です。
最後に紹介させていただくのは、第1回目から触れていました『私がずっと気になっていたカフェ』です。

[4]Coffee Base NASHINOKI

店名にもなっている『梨木神社』の境内にあるカフェです。
『梨木神社』は御所の通称で知られる『京都御苑』の東側にあります。

祭神は、明治維新に大きく貢献した三條實萬・三條實美父子。
三條父子は、和漢の学問に精通した学者でもあったことから学業成就のご利益があるとか。

また、梨木神社の境内には桂の木があります。
桂の木の葉がハート形をしていることから、「愛の木」と呼ばれ、恋愛成就のご利益があるといわれているそうです。
学業と恋愛のご利益だなんて、学生さんもってこいの神社ですね!

まるで社のような建物は、京都御苑にあった『春興殿』の一部を移築されたもの。
店先にかかる暖簾が現代風で、店内もとてもスッキリしています。

縁側席は昔ながらの風情があり、近代的なセンスと情緒の絶妙なギャップに心を掴まれます。

ここで飲むコーヒーは間違いなく格別です。

そして実際に、とても美味しいです。
それにはひみつがありまして、実はここのコーヒー、京都の名水と名高い「染井の水」を使っているそうです。

このカフェは、京都の町中でありながら、まるで森の中のような雰囲気であり、そこで名水を使用したコーヒーが飲める。
ハッキリ言いまして、最高のロケーションです。

こういうところに来ると、創作活動も捗るもの。
さてさて、ようやく創作話。
前回はプロットについてお話させていただきましたが、今回は私流キャラクターの作り方をお伝えさせていただきます。

私の初めての担当編集さんは、とてもきめ細やかに教えてくださる方でした。
その編集さんに最初に教わったのが、こちら、
「主要キャラクターの履歴書を作ってください」
ということ。
「えっ、履歴書ですか?」
驚きました。
私はそれまで、頭に浮かんだキャラクターをそのまま書いてきました。
書きながら、その人物の経歴、人となりが浮かんできて、後から作っていったのです。
そんな私にとって、この指示はなかなか衝撃的でした。
「正確には、履歴書のようなものでいいんですが」
と、担当さん。
彼が言うには、小説には書かなくても、
主人公がどこで生まれて、
どのような家族構成で、
どういう生い立ちをしていったのか、
そういうものが、しっかり決まっていると、物語がどんなに長くなっても、キャラクターがぶれることはないと教わったんです。

私は素直に主要キャラクターの履歴書を書きました。
そうすると、主人公に兄弟がいるのか一人っ子なのかだけでも、性格に違いが出てくるのが分かったんです。

初めての担当さんはとても細かく見てくださいる方でした。
車に乗るシーンでは、
「この車種はなんですか?」「どうしてその車を選んだのですか?」
ラーメンを食べるシーンでは、
「このラーメンは何味ですか?」「どうしてそのラーメンを選んですか?」「トッピングはつけたんですか?」
と怒涛の質問も受けました。
正直「細かっ」と当時は思ったのですが、掘り下げていくことで、キャラクターの人物像がよりハッキリしていくもの。
この時、教わったことは今も生かしてます。
K崎さん、ありがとうございました。

さて、今回で『創作とカフェ』シリーズはおしまいです。
次回からも京都の『今気になるもの』を紹介させていただけたらと思っています。
今年一年、ご愛読ありがとうございました。
皆様、どうか良いお年を。
来年もどうぞよろしくお願いいたします。

この記事を書いた人
望月麻衣
 
京都在住の道産子。もの書き。 『京都寺町三条のホームズ』(双葉社)『わが家は祇園(まち)の拝み屋さん』(KADOKAWA)『京洛の森のアリス』(文藝春秋)『太秦荘ダイアリー』(双葉社)など書籍発売中。  
 

タグ一覧

#人気ワード